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平凡生活に一匹の猫が

 遅い夜飯を食べて、シャワーから上がった俺は、ソファーで丸まって寝てるミケが一番に視界に入った。  こんなところで寝たら風邪引くだろうが。  俺はミケを持ち上げて、ベットへと連れて行く。  軽っ。中学3年の男ってこんなに軽いものなのか。  持ち上げてるのに、腕に全く体重がかかっていない。  ゆっくりとミケをベットの上におろし、布団を掛け、俺がさっき結んだ前髪に跡がつかないように、ゴムをほどく。  さらさらした黒色の髪が、一気に顔にかかる。  俺はその前髪を綺麗に分けて、あどけない寝顔を見詰める。  この子の親は心配していないんだろうか。  学校にも行かず、ずっとあの海辺で時間を過ごすミケ。  何かワケありなんだろうけど、俺が軽はずみに聞いちゃいけない。  俺はミケが起きないように、ベットから離れソファーに座ってテキストを開く。  今日の復習と明日の予習をする。  どうしても行きたい大学がある。その大学に合格するためにも今、勉強を頑張らないと。  正直、バイトと勉強で毎日、睡眠不足だし辛いけど、そんな甘ったるいことは言ってられない。  俺は自分の頬を思いっきり叩く。  コーヒーでも飲んで、眠気覚ますか。  キッチンでお湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹れる。 「………つ、つばき…」  キッチンを覗き込んだミケ。  できるだけ音を立てないように気をつけてたけど、目が覚めてしまったのか… 「どうした?うるさかったか?」  俺はミケと同じ視線になるために、屈む。  え…泣いてる…?  ミケの頬は涙が流れた跡があり、睫毛も涙で微かに濡れている。 「怖い夢でも見たか?」 「……うぅぅっ…」  優しく問いかけ、ミケの頭に手を乗せた俺に、一気に涙を流し嗚咽をあげてるミケ。 「よしよし。今温かいもん作るから」  俺はホットミルクにはちみつを入れ、ミケと一緒にソファーに座る。  さっきより落ち着いてきてるミケは、ホットミルクを冷ましながらちびちび飲んでいる。 「大丈夫か?」  コーヒーを一口飲み、ミケの顔を覗き込むと、ミケは小さく頷いた。

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