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「ミケは目玉焼きは何かける派だ?」
机には、塩にコショウ、マヨネーズにケチャップ、しょうゆ、ソースが並んでいる。
そんなにかけるのか…?
てか何もかけなくてもいいけどな。
「ちなみに俺は断然、ケチャップ派だ!大体のやつは、塩かしょうゆ、ソースで論争してるんだが、そんなのありきたり。絶対ケチャップが美味いから」
つばきがケチャップの蓋を開け、目玉焼きにかけてる。
「…へぇー」
あまりにも熱く熱弁するつばきに、曖昧な返事をしつつ、目玉焼きに箸を伸ばす。
箸の持ち方は昨日、つばきに教えてもらった持ち方でちゃんと持っている。
今まで、適当に持っていた僕だけど、箸にも正しい持ち方があったなんて、昨日初めて知った。
「ちょっと、待った!」
なんとか箸で一口分切った僕に、待ったをかけるつばきは、ケチャップを目の前に持ってきた。
「ミケになにもこだわりがないなら、ケチャップをかけて食って欲しい」
真剣な声音と真剣な顔で言ったつばき。
「まぁ。つばきが言うなら……」
そう言い切る前に、僕の目玉焼きにケチャップをかけた。
無邪気な笑顔で、「よしよしこれでミケもケチャップ派に仲間入りだ」と呟いてるつばき。
「さあ、さあ、召し上がれ!」
僕は恐る恐るケチャップのかかった目玉焼きを口に入れる。
「……美味しい」
「だろ?目玉焼きにケチャップは当たり前!」
そう言い、笑顔で目玉焼きを頬張ってる。
笑顔で頬張ってる姿に、低いつばきの声が似合わなくて、笑いそうになった。
「今日はミケの服とか買いに行こう。さすがに俺の服はミケには大きすぎるし」
朝食を食べ、ソファーに座ってぼーっとしていた僕に、食器を洗い終わったつばきがそう声をかけた。
「といっても田舎町だから、店もあんあまりないんだけどな。近くのスーパーに売ってる服でいいか?」
そんなの服を買ってくれるだけで十分だ。
僕は首を縦に思いっきり頷いた。
それからスキニージーンズにセーター、コートを羽織ったつばきは、僕に自分の厚手のもこもこした生地のジャケットを着せた。
そして僕の手を握り、部屋を出て近所の少し大きいスーパーまで歩く。
海沿いの道をふたりで歩きながら、僕は明るい海をみた。
夜と違って、海の向こうまで見える景色。
その海の姿が、今の少し先の見えつつある僕の未来とそっくりで笑顔になる。
「ミケは、海と星が好きなのか?」
海から隣を歩くつばきの顔に目線を変える。
「俺が最初に見つけた時も、砂浜で海と星を眺めてたし、今も海眺めてた」
前を向いたままのつばき。
僕はつばきの顔を見ながら「好き」と答えた。
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