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平凡生活に色づく日常

「――なんか、最近お前、生き生きした顔してんな。この前まで、死んだような顔してたのに」  学校の教室。  昼休み、賑わった教室内。  俺は教科書を開き、次の授業の予習をしていたところに、クラスメイトのひとりが声をかけてきた。 「なんだよ。死んだ顔って。失礼なやつだな」 「いや、まじで。目の下のクマもひどかったし…折角のいい顔が台無しだったんだよ」  そのまま俺の前の席に座り、体だけを此方に向けている。 「しかも青春時代である高校2年生。セブンティーンを勉強ばかりして過ごしてるし」 「そりゃあ、今頑張らないといけないからな」 「お前、もしかしてもう進路とか決まってるのか?」  目を見開いて聞いてきた。 「当たり前だろ」 「はぁー。まじか。すげーなお前。尊敬するわ」  俺の肩をポンポンと叩いてきた。  叩く力が強すぎて地味に痛いし。 「でーもっ!お前、最近勉強以外にもなんかやってるだろ!?」  いきなり声を荒らげたので、クラス中の奴らが此方を一斉に見た。  俺は眉をしかめ、「うるせー」と呟く。 「俺は分かるぞ。お前、ついに彼女できただろ!?」  さっきよりは声の大きさを抑えているが、それでも大きい。  現に近くにいたやつらにはバッチリ聞こえている。 「そうか。そうか。モテるお前にもついに彼女がね…。こりゃあ学校中の女が泣くな…」 「おい!」  てか勝手に話を進めるな。 「で、彼女はこの学校のやつか?俺の予想だと、違う学校のやつだな」 「彼女なんていねぇけど?」  俺は不機嫌さを表に出し、声を低くした。  てかもうすぐ昼休み終わるし、まだ予習終わってねぇんだけどな…。 「そう怒るなよ。誰にも言わねーよ。あれだろ?バイト先のバーの年上お姉さんだろ?」  もう一度言い返そうと思ったが、タイミング悪く予鈴が鳴り、クラスメイトは「じゃあな」と自分の席に戻っていった。  結局、俺に彼女がいるって勘違いしたままだし。  はぁーめんどくさ…。  その日のうちに、俺に彼女ができたという嘘の情報が学校中に広まったが、訂正するのもめんどくさかったので、そのままにしといた。  まぁ、これで告白してくるやつも減るだろうしちょうどよかった。  学校が終わり、そのままバイト先である駅前のバーに行く。  バーといっても、カクテルは作れねーから、掃除とか雑務がほとんどだが、そこで0時まで仕事する。  高校生は夜10時までという決まりがあるが、大学の学費を稼ぐためにも俺はマスターに頼み込んで、0時まで働いてる。  それから、24時間空いてる駅前のスーパーで弁当を買って帰る。  ミケお腹空かして待ってるかもな。  てかあいつ、一日食べなくても平気みたいだから、どうせ昼何も食ってねーんだろうな。  俺は足早に家路へ急ぐ。 「つばき、おかえり」  玄関のドアを開けたと同時に、目の前に座っていたミケが笑顔で俺を迎える。 「ただいま。ってか、お前何でこんな所にいるんだよ」  俺は座り込んでいるミケを立たせて、部屋へと連れて行く。 「……ずっとあそこにはいないよ。つばきの足音が聞こえたから、あそこで待ってたの」

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