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 えーと。確か、教材は1階だったはず。  俺はミケの手を取りながら、お目当ての教材コーナへと向かう。  小学6年間と中学3年間の漢字ドリルと、計算ドリル。  俺の分の数学の問題集を手に取り、レジへと歩き出そうとした。  ……が、手を握っているミケが立ち止まったままで、俺はミケの方に視線を向けた。 「……これ…」  小さく呟いたミケの視線の先には、1冊の星座の本だった。  そういえば、ミケは星が好きだったもんな。  俺はその本も手に取った。 「これ欲しいんだろ?」  俺の手にある星座の本を凝視しているミケ。 「……いいの…?」  遠慮気味に聞いてきた。上目遣いで俺を見ている。  前髪の隙間から見えるミケの黒色の大きな瞳がうるうるしている。 「いいよ。こんぐらい」  俺は視線を逸らしつつ、ぶっきらぼうに答え、レジへとミケの手を引っ張って向かう  お金を払い、書店を出た俺たちは、ついでだから夕飯を食べるため近くのファミレスに入る。  まだ早い時間だから、そんなに客は入っていないが、学校終わりの学生が多い。  店員に案内された席に座る。  家のソファーで座っているように、俺の隣に座ろうとしていたミケを慌てて向かいに座らせた。  そんな俺に少し膨れているミケ。  可愛いけど、さすがに2人できて隣同士で座るのは恥ずかしい。  俺は怒った様子のミケに笑いかけ、メニュー表を見せた  怒っていたのが嘘のように、メニュー表を食い入るように見ている。  瞳がキラキラしている。  ファミレスにも来たことないんだな…。  これから俺がミケに様々なことを体験させてあげたい――。  頬杖してメニュー表を見ているミケの姿を優しく微笑みながら見詰める。 「おっ!椿じゃね??」  ぼーっとミケを見ていた俺の後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。 「やっぱり!椿!!」  後ろを振り向くと、あの時、勝手に俺に彼女がいると勘違いしたクラスメイトと数人の男子がいた。 「なにお前、今日バイトじゃなかったのか?」  俺たちの席に近づいてきた。 「ああ。まぁ」 「なんだよ、ホームルーム終わったらすぐいなくなるから、バイトかと思って誘わなかったのによ」  そう言いながら、俺の向かいに座っているミケに視線を向けた。  ミケは俯いて前髪で隠れているが、怯えたようにやつを見ている。  早くこいつを、この場から離れさせないと。 「……え、誰?椿のダチ?」  立ち上がった俺に不思議そうに聞いてきた。 「あ、弟とか?」 「ま、そんな感じだ。ほら早く行け!」  俺は一刻も早くこいつを、この場から離れさせた。 「ふーん。まあいいけど。じゃあな」  納得したのか、自分の席へと戻っていった。  俺はその後ろ姿を確認し、席に座った。 「ミケ、大丈夫か?」  未だ俯いたままのミケ。  肩が微かに震えている。  俺は覗き込むようにミケの顔を見たが、髪の毛が邪魔で見えない。 「……うん…大丈夫」  か細い声でそう答えたミケは、俯いていた顔をあげた。  髪の毛で隠れているが、表情はさっきの不安そうな顔よりは落ち着いている。  ……大丈夫、かな? 「つばき、僕これで……」  クリームパスタを指差したミケ。  俺は店員を呼んで、ミケのパスタと自分の分のハンバーグを注文した。

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