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灰色生活に安心な日々が

 ───最近、時間が経つのが早く感じる。  朝はつばきが起きる6時半に一緒に起き、買った惣菜パンやサンドイッチなど軽めの朝ごはんを一緒に食べる。  その後、つばきは学校に行く。  僕は家でつばきに買ってもらった、漢字ドリルや計算ドリルを解く。  分からないところがあったら、まとめてつばきが休みの日に聞く。  学校とバイトで毎日忙しいつばき。  帰ってくるのだって、夜中。そんな疲れて帰ってきたつばきに聞くのは躊躇ってしまう。  だから僕は疲れて帰ってきたつばきに、少しでも負担はかけたくない。最近は料理を作って待ってたりする。  美味しくもない、でも不味くもない。そんな料理を美味しそうに笑顔で食べてくれるつばき。  もっと、もっと料理上手くなって、すごーく美味しいものを作りたい。  もっとつばきには笑顔になってもらいたい。  つばきの目尻まで下がってシワの寄る優しい笑顔。右頬にできる窪みを見ていたい。  夢中でドリルを解いてたらいつの間にか昼を過ぎている。  つばきは冷凍庫の中に、僕の昼ご飯である惣菜をストックとしてかなり買ってくれてるが、少しでも料理の練習をしたいから、自分で作る。  つい最近、つばきの一番好きなオムライスを綺麗に作れるようになった。  味も美味しいと思う。    お昼ご飯を食べてからは、星の図鑑をソファーに座ってひたすら眺める。  本の中の夜空の星も綺麗だけど、やっぱり実物のほうが断然綺麗。  でも最近、星を眺めていないから、ちょっと寂しい。  そんな感じで、図鑑を眺めていたら、3時になっている。  昨日から始めた、牛乳瓶の回収のバイトへ向かう。  学校に行っていないけど、まだ中学生の年齢な僕。    自転車で玄関先に置いてある牛乳瓶を回収する単純な作業なので、何も知らない僕でも出来る仕事。  牛乳瓶回収のバイトが終わったら、そのまま夕刊配達のバイトもしている。  ついこの前まで、住む場所もない、名前も分からない僕なんかが仕事なんてできない。  そう思ってたのに、不思議。  これも全部、つばきのおかげ。そう思う。  名前は、つばきが言ってくれた名前。  ”卯海みけ”として職場の人達に言っている。  新聞配達のバイトが終わって、家へと帰る。  今日も夜中に帰ってくるつばきのために、オムライスを作って、ドリルを解きながらつばきの帰りを待つ。  このドリルで大分、漢字を読み書きできるようになった僕。  勉強がこんなにも楽しいなんて思わなかった。  夜中の1時前。  つばきのコツコツという規則正しい足音で、玄関前に座る。  それから5秒もしないうちに、玄関の鍵の音とともにドアを開く。  少し疲れた顔をしたつばきが、僕に優しい微笑みを浮かべて、「ただいま」と言った。  僕はすぐさま「つばきおかえり」と笑顔で答える。  狭い玄関。  靴を脱いだつばきが座り込んでいる僕の腕を上にあげて立たせる。 「もうわざわざ此処にいなくてもいいんだぞ?」  やれやれと言ってる。  いいんだ。僕が玄関まで行きたいんだから。  ソファーにドカっと足を広げて座っているつばき。  僕は作っていたオムライスを温め直して、ソファーの前の机に置く。 「おおっ!美味しそう」  一気に顔が綻んだつばき。  「いただきます」と呟いて、食べ始める。  僕も自分の作ったオムライスを食べる。

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