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「…なんかミケ、どんどん料理の腕上げるなー」  あっという間に完食したつばき。 「しかも何か卵もふわふわで、ちょっと甘い…」  卵の味はつばきの好きな少し甘めな卵にしている。  それに気づいてくれたことが、嬉しい。 「そういえば、ドリル分からないところとかあるか?」  食器を洗って、ソファーに戻ったつばきが机の上においていたドリルをパラパラと捲る。  計算の方で今日ちょっと分からないところがあったけど、疲れて帰ってきてるつばき。  俺は首を横にブンブンと振った。  教えてもらうのは、バイトが休みの日って決めてるんだから。 「そうか…?でもここ空白だぞ?」  今日解いていたページの空白な部分の問題を指差したつばき。 「……あっ。いや…その問題気付かなかった……」  口ごもりながら小さい声で答えた。  そんな僕の頭を優しく撫でたつばき。 「ミケならちょっと教えれば、すぐわかるはずだよ」  そう言ったつばきは、そのまま解き方を優しく教えた。  ミケの教え方は本当に上手くて、何で分からなかったんだろうって不思議に思うほど、簡単に解けてしまう。  あっという間に答えを導き出した僕の頭をよしよしと撫でてくれた。  こうやって優しく頭を撫でてくれるつばきの大きな手が好き。  つばきの優しい笑顔も好き。  暖炉の炎のような優しくて温かい心も好き。  この好きが恋愛感情で好きってのも、ついこの前、つばきと一緒に見た片思いを題材にした恋愛ドラマを観て気づいた。  ドラマの主人公の感情があまりにも僕に似て、その主人公と僕を重ね合わて夢中でドラマを観てしまっていた――。  つばきは僕のことは、手のかかる子ども、ペットぐらいにしか思ってないことも知っている。  この前、初めて連れて行ってもらったファミレスというごはんを食べる所。  そこで椿は男に「弟か」と聞かれ肯定したんだもん。  でもいい。母からも疎まれ、友達もいない。  ひとりぼっちの僕には、そんなつばきから弟のように接してもらい、温かすぎる優しさを僕にくれる。それだけで十分幸せ。 「…てかお前、まだ風呂入ってないのか?」  鉛筆を持ったまま固まったままの僕を不思議そうに見ているつばき。  そういえば、オムライスを作って、ドリルを解いてたから入ってない…。 「ほら、早く入って来い」  そんな僕から鉛筆を取り上げ、無理やり立たせた。  シャワーを浴び、スウェットに着替えた。  つばきはソファーでドライヤーを持って待っている。  つばきに髪を乾かしてもらうのも好きだ。  僕はつばきの隣に座って、目を瞑る。  つばきの髪を梳いてくれる手つきが好き。落ち着く。 「よし」  そう呟き、ドライヤーを切った。 「ミケ眠たいのか。ベット行くか?」  つばきの手が気持ちよくてうとうとしていた僕の顔を覗き込んだつばき。 「…うーん。眠たい…かも」 「じゃあ、ほらベット行くぞ」  立ち上がって俺を抱っこしたつばき。 「うん。最初の頃よりは少しは重くなったな」  そう言いながら移動し、ベットの上に僕を下ろし布団を被せた。  そのままベット横に膝まづいたつばきが、胸をトントンと優しく叩く。 「おやすみ」  低い。でも自然と耳に入るつばきの優しい声も好きだな。  そんなことを思いながら、いつの間にか眠っていた――。

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