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灰色生活に聖なる夜が訪れる

「――ミケ。寝るぞ」 「…うーん…」  つばきの作ってくれた卵チャーハンを食べ、つばきがシャワーを浴びている間に食器を洗い、ソファーに座ってうとうとしていた僕に、いつの間にかシャワーを浴び終わったつばきが声をかける。 「仕方ないなー」  そう呟いたつばきは、僕の膝裏に手を入れ持ち上げ、ベットまで運んでくれた。  そしてそのまま僕の隣に一緒に寝る。 「あれ?つばきもう寝るの?」  抱きしめてくれたつばきの胸の中に顔を埋めつつ訊く。  いつも勉強してから、ベットの中に入るのに。 「そうだな。明日から冬休みだし、夜中の勉強は当分はお休みかな」  胸の中に埋めた僕の頭を撫でながらそう言ったつばき。  じゃあ、当分は一緒にベットの中に入って眠れるんだ。  嬉しいな。 「そうだ、つばき明日クリスマスだけど、バイト休みだしクリスマスパーティーでもするか」  胸の中でうつらうつらしていた僕は、つばきの言葉が理解できぬまま小さく頷いた。  翌朝。いつもよりも遅い時間に起きたつばき。  歯磨きして着替え、僕にも「ほらはやく」と催促する。  適当に服を着替え、つばきにもこもこコートを上から着せられ、外へと出る。 「……つばきどこ行くの?」  手を繋がられ、海岸沿いの道路を歩いている。 「どこって、スーパー」 「食料ならまだあったよ…?」  冷蔵庫にはまだ十分食料は入ってたはずだけどな…。  僕は隣を歩いているつばきを見上げた。  つばきはそんな僕に微笑んだ。 「昨日言っただろ。クリスマスパーティーするって」 「クリスマス…」  そういえば昨日ベットの中でつばきがそんなことを言っていたような気もする。  クリスマス。名前だけは知っている。  でも何をする日なのかは知らないけど、パーティーをするものなのか…?  パーティーって…豪華な食べ物を食べたりするんだよね?  スーパーに着いた僕たち。  いつもは置いていないような惣菜がたくさん並んでいて、店内のBGMも軽快なメロディーが流れている。 「ほら、これ食べたことあるか」  右手はスーパーのかごを持ち、左手は僕の手を握っているつばきが視線で、棚に並んでいる鶏を示した。 「……すごい…」  鶏の足がまるごと焼かれている。 「まぁクリスマスはチキンを食べるのが一般的だからなー」  そう言いながら、僕の手を離してかごのなかに鶏を入れたつばき。 「あとは、ミケの作ったオムライス食べたいな」  微笑みながら僕の頭を撫でている。 「作る!つばきが食べたいならいつでも作るよ」 「ありがとう」  僕の答えに嬉しそうにしているつばき。 「ケーキも食べないとなー」  そのままケーキとコーヒーゼリーもかごに入れたつばき。 「コーヒーゼリーも食べたいからな」  コーヒーゼリーも食べるのかな…と思っていた僕の顔をみたつばきは付け足すようにそう説明した。  まあ、つばきが食べたいならいいか…。

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