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あれ、いつの間にか寝ちゃってたんだ…。
朝起きると、ベットの上で寝ていた。
昨日の夜、自分で布団に入った覚えはない。ってことは、つばきがベットまで運んでくれたのかな。
「あ、ミケおはよ」
つばきがベットの置いてある部屋へと入ってきた。
「つばき、おはよう。昨日運んでてくれたの?」
「そうだぞ。ミケ、そば食べたらすぐ寝るから。あ、新年の挨拶まだしてなかったな」
「…新年の挨拶?」
そうか。昨日が、1年の最後の日、大晦日だったなら次の日は新しい年の始まりの日だ。
「そう。今日は1月1日。新年を迎えて初めて会った人たちには、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。って挨拶するんだ」
「つばき、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「明けましておめでとう。こちらこそよろしくお願いします」
僕の挨拶に笑顔で答えてくれたつばき。
新しい年の一日の始まりにつばきの顔を見られるなんて幸せだなー。
「あ、そうだ。今日は初詣行こう」
「はつもうで?」
「近くの神社に行こう。小さいとこだけど、隣町の大きな神社より人少ないだろうし」
神社に行くのか。
「神社では、一年の感謝と新年の無事と平和を願うかな」
神社に行って何をするのかな。っと思っていた僕の顔を見て、説明してくれたつばき。
一年の感謝と新年の無事と平和、か…。
「まぁ、そんな固い感じじゃなくて、普通にお願い事をすればいいと思うよ。てかだいたいの人はそうだと思う」
お願い事か。
それなら、お願いしたいことがある。
「行きたい!」
「よし行こう。ってその前に、ミケはシャワーを浴びて来い。昨日の夜浴びずに寝ちゃっただろ」
そうだった。
ベットまでつばきが運んでくれたんだった。
「うん。シャワー浴びてくる!」
*
すぐシャワーを浴びて、つばきに髪も乾かしてもらい、神社へと向かった。
いつも通る道とは違う道を歩き、10分ぐらいで目的地の神社へと着いた。
「うん。やっぱり人全然いないな」
小さな境内には、誰一人おらず、しーんとしている。
「よし、お願い事しよう」
そう言い、5円玉を僕に渡したつばき。
「一礼して、そこに5円玉投げて、手を合わせてお願いごとをする」
「分かった」
つばきと2人並んで礼をして、5円玉を投げ、目をつぶって手を合わせた。
神様、つばきと出会わせてくれてありがとうございます。
つばきのおかげで、毎日がとても楽しいです。
何をすればいいのか分からず、ただぼーっと過ごしていた日常がつばきと出会ったことで、色づきすごくすごく充実しています。
そんな、つばきの夢。
学校の先生になる、という夢が叶いますように。お願いします。
僕は何度も何度もお願いします。と神様にお願いし、ゆっくりとつぶっていた目を開いた。
「長かったな、ミケ」
目を開いて、じーっと前を見ていた僕に隣に立っているつばきが声をかけた。
「うん」
「何お願いしたの?」
つばきはいつもの優しくて温かい笑みを浮かべてる。
目尻の皺、右頬にできる窪み。
この笑顔に何度も助けられた。
「……秘密」
きっとお願い事は、他人に言っちゃいけないだろう。
いや、このお願いをつばきに言うのはちょっと恥ずかしい。
「ケチ」
さっきまで笑顔だったのに、すねた表情をしているつばき。
そんなつばきに思わず笑ってしまった。
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