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第8話

「きゃあああああっ」 夢を見て、飛び起きた。 多分。 だってここは、ロボの屋敷。 紅に与えられた寝台の上。 ロボはいない。 でも、屋敷の人が紅のために抱き枕を作ってくれた。 ロボの匂いがついた手触りのいい布で、カバーを作ってくれて、ロボがいない夜には寝台においてくれる。 それが手元にあるの。 だから、ここはロボがいない、ロボの屋敷のはず。 でもね。 でも、さっきまで目の前にあった光景が忘れられない。 藍が連れていかれた。 紅は何にもできなくて、隠れていろと言われたのに、藍を追いかけた。 その紅を捕まえたのは、ガートだった。 「あ……あ、藍……藍っ藍ッ!」 どうして。 どうして。 藍が連れていかれてしまう。 紅は寝台を降りて、藍を探しに部屋を出た。 ガートがどうして、紅の邪魔をするの? 藍はどこ? 真っ暗な屋敷の中、ぺたりぺたりと歩く。 夜目のきくものが、夜番に立つことが多いのだと、ロボは言っていた。 この屋敷の夜は、御館にいた時よりも暗い。 ぺたりぺたりと足音が響く。 「藍……?」 何かの気配がして、紅は庭を見た。 いる。 知ってる気配。 でも怖い。 近づいてはいけない気配。 でも、どうしても気になるの。 「誰?」 がさりと庭木が揺れた。 けれど、それだけ。 誰かが出てくるかと思ったけど、誰も出てこない。 なんの音も声もしない。 どうしても気になって、紅は庭に出てみようと思った。 ぱたぱたと走って、庭に出る扉に向かう。 途中で誰が紅に呼びかける声がしたけど、そのまま走った。 暗い庭。 「誰かいるの?」 呼びかけたけれど、気がついていもいた。 誰もいない。さっきの気配がないもの。 藍。 藍。 ここにいて。 紅はひとりよ。 どうしたらいいのか、わからない。

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