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第10話

「おやおやおや」 その人は、紅の顔をみたとたん、もしゃっとした眉を下げて笑った。 「かわいいヒト族のお子。どうされた」 「だあれ?」 「モグラ種のトポといいますよ。混合種族ですけれど、医者をしています。ロボさまがあなた様を心配されてな」 「お医者さま? 紅です。よろしくお願いします」 紅はここしばらく熱が下がらない。 すぐに悲しくなって、涙が出る。 きっと藍がいないから。 そう言ったけれど、病だといけないからと、トポさまは紅の診察をする。 診察の途中で、トポさまは困ったように、もしゃもしゃの眉をますます下げてしまった。 「これは……どなたか、番う方はおられますかな?」 「いいえ」 「ふむ」 多分もうすぐ分化して、初めての繁殖期が来るのだろうと、トポさまはおっしゃる。 ロボは紅を望んでくれているけれど、紅は違うと思うの。 だから、今繁殖期にはいるのは、困る。 「ふむふむ……ん?」 「なあに?」 トポさまは、紅をもう一度診察してから、クンクンと匂いを確認された。 そうして少し考えてから、ロボのところに行ってくると部屋を出ていってしまった。 どうしたらいいの? 紅は、ひとり残されて、途方に暮れる。 ロボが言っていた。 御館で育てられた全きモノたちは、王宮の都合の良いように利用されていた、と。 あのあと、もう一度話を聞いた。 どういうことなの? って。 オメガは王宮が力を持ち続けていられるように、別の国との婚姻につかったり、国のためにアルファを産んだり、していたのだっていっていた。 アルファは、その身を王宮のために使っていたって。 戦に出たり、婚姻を結んだり。 全きモノは全きモノと番わなくてはいけない、というのは、ないのだって。 自由だよ。 そう言われても、紅にはわからない。 心のままに好きな人と番っていいと言われても、わからない。 ロボたちがそうできるように、国の仕組みを変えたのだって、言っていた。 だからロボは忙しい。 ロボはアルファだから、紅がオメガになるのなら、一緒になるのがいいのかな。 でも……藍。 どうしたらいいのだろうね。

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