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第2話

 合コンは難なく進み、少し席を外すとトイレへと向かう。男女で分かれているのに、アルファとオメガでは同じなのは何故なのだろう。外見に見える体のつくりとは同じでも、この2つの性は全く違うものなのに。 「佐藤、少しいい?」 「はいはーい、話じゃないなら俺の友達通してくださーい」  手を洗っていると同じ合コンに出ている男が入ってきた。またこれだ、樹は慣れたように受け流し、後ろから抱きしめてこようとする男の腕から逃れる。  今日はアルファがいないと言っていたから参加したのに。アルファがいる時点で絶対に参加しないと言っていたのに、騙したな。  これまでどれだけアルファに狙われたか。性別を気にせずに生きていたいのに、それをアルファが許してくれない。人気のないトイレなんて、その気はなくても襲ってくれと言っているようなもの。力では勝てない、どうやって受け流せばいいかこの21年の積み重ねで理解しきっている。だからと男の手から逃れ、座席へと逃げた。  アルファの言う好きなんて、自分がオメガだからに決まっている。オメガだから好きになられても、従順でもなんでもないただの男でしかない自分になんて飽きて嫌いになるに決まっている。  だから、自分を好きにならない相手が好き。身体目当てに好かれたって嬉しくもなんともない。  樹は座席に戻るなり、自分の隣に座っていた友達未満の男の大きな尻尾を掌で力強く上から押し潰した。 「痛っ⁉︎」 「悪い、踏んじゃった」  棒読みな上に冷めた目でじっと見上げると、はっと気付いたように男が座っていた席を見いないことに気がついたようだ。話に花を咲かすのもいいが、少しくらいは気にしていてくれ。  人と同じ大きさの猫である尾上はそれまで上機嫌に女性達と会話を弾ませていたのだが、しゅん、と立っていた耳が垂れる。樹が何を言いたいのか理解したのかごめんと小さく謝ってきた。  この世界には、男女の違い、第3の性の違いの他に人間と獣人の違いもある。合コンの会場に選んだこの居酒屋にだって人の頭や獣の頭、身体の一部だけが獣の人までいる。  そんな多種多様な世界なのに、オメガはヒエラルキーの最下層から絶対に上には上がれない。それを一番わかっているのはオメガ本人達だ。だからこそ、頂点であるアルファには近付きたくないのだ。ただの飲み会ならまだしも、合コンの場でなんて会ってしまえば、何を言っても所詮は誰かと付き合いたいから来たなんて思われるに決まっているから。

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