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第11話

 スタッフルームには大きめのソファやロッカー、デスクがある。樹はソファに座らせられ、濡れた髪をタオルで拭われた。 「なかなかとれないね。目には入ってない?」 「大丈夫です、髪と服だけなんで」 「流石にズボンはサイズ違いすぎて貸せないな……。ちょっと待っててもらえる?」 「はい」  岬生はそう言うなり出て行ってしまう。女性に借りるのだろうか、それもサイズは合わない気がするが……。  暫くすると店の方から騒めきが生まれた。そして戻ってくる岬生と女性に、首を傾げる。 「今日はお店閉めちゃうことにしちゃった。たつくん、嫌だと思うけど俺んち行こうか。そんな格好で家に帰したら親御さんに申し訳ないから」 「え、えっ、待ってください、なんで?」 「俺が止めればなんとかなったし、俺と同じアルファの所為だもん。ごめん、夜間保育園に息子迎えに行くことになるからちょっと時間もかかるかもしれないけど」 「いえ、あの、帰りますよ」 「このままじゃ帰せません。まだ髪の毛ベタベタだし、うちの方が近いでしょ?」 「いや、でも……」  女性からの視線が痛い。狙ったわけじゃないのに好きな相手の家に行くような段取りになってしまい、慌てて止めるも樹の話など聞いていないようだ。岬生は荷物をまとめ、樹にバスタオルを巻き抱き上げる。 「ごめんねよしくん、締めお願いできる?」 「大丈夫です。お気をつけて」 「はぁい。たつくん行くよ」 「あの、ちょっと」  簀巻きにされては抜け出せない。裏口から出、ビル地下の駐車場に出ると黒いボックスカーに乗せられた。チャイルドシートの隣に降ろされ、岬生はすぐに運転席に乗り込んでしまう。

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