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第15話
迷った末、嫌われるのは嫌だからとしっかり肩まで浸かり1時間。樹は脱衣所から出るなり子供を寝かしつけた後の岬生に詰め寄った。
「俺の服何処にやったんですか?」
今着ているのはぶかぶかのTシャツ1枚で、その下は何も履いていない。あまりの体格差にも一瞬ときめいてしまった自分を殴りたい気分だ。岬生は悪びれずに笑ってそれを迎える。
「りんごの匂い染み付いてたから洗っちゃった。朝には乾くよ」
「なんで、帰ろうと思ったのに」
「諦めて泊まって行きなよ、そんなにアルファのこと嫌いだった?」
「……そういうわけじゃ、ないです」
むしろ、好きだから帰りたいのに。
少しでも伝わってしまうのが怖い。樹は目を逸らし、汚いリビングを見やる。もし離婚されたか何かなら多分これが原因だろう。タダで泊めてもらうなんてできない。樹は丁度いいと思いついたことを口にした。
「泊めてくれるなら、お礼に掃除します」
「いやあ、悪いよ」
「というか、掃除させてください。玄関から全部。俺の服洗濯する前に此処に溜まった洗濯物どうにかした方がいいと思います。とりあえず服を仕分けてゴミ捨てて皿洗って靴並べるくらいなんで大したことはしませんが」
岬生と一緒の部屋で一晩なんて無理だ。何かをして気を紛らわせていなければ正気を保っていられない。
樹はすぐに片付けにとりかかる。洗濯物かそうでないか、白いか色物かで次々と分けていく。
穏やかで真面目でしっかりもののアルファなのに、掃除片付けは苦手だなんて意外だ。次々に仕分けをし、洗濯物を脱衣所に持っていくついでに玄関で靴を並べる。靴のサイズだって全然違う。肩からずり落ちるTシャツを何度もずり上げながら、半分は子供の、半分は岬生のものになるように並べ直した。
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