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第16話

「たつくん、お布団なんだけど」 「ソファでいいです」 「そんなわけにはいかないから。とりあえずうち今俺のベッドと蒼夜、息子の布団しかなくてさ。俺息子と一緒に寝るからたつくんは俺のベッド使ってくれる?」  部屋の隅にでも転がしてくれればいいのに、そう思いつつ岬生のベッドでなんて眠れるはずがないと振り向く。  岬生は両手で目を覆いながら話しかけてきていた。 「何をしてるんですか?」 「いや、ちょっと目に毒というか、いや悪い意味じゃないんだけど」  ……成程。樹はさっと身体を上げ、大腿まで覆う裾を正す。  別に見られるくらいなら男同士だから気にならない。理性を失った猿のように襲われないことも、また岬生のことを好きになってしまいそうになる。  平静を装い、樹は低めの声で問いかけた。 「見たんですね?」 「……ごめんね?」 「別にいいです。でもこの格好にさせたの岬生さんじゃないですか」 「うう、だってそんな、お尻見えちゃうポーズするなんて思わないじゃないか」 「そもそも番でもなんでもないオメガを家に上げる時点であんたずれてるけどな。……いや、アルファからしたらよくあるのかもしれないけど」 「俺はそんなことしたことないよ?」 「岬生さん以外のアルファの話です。せめてパンツくらいは洗わないでいてほしかったんですけど」 「でも一回脱いだものって着たくなくならない?」  確かにそうだが、着替えもなくシャワーを浴びたのだから同じ下着でも仕方のないことだろう。声が近付いたからなのか目から手を離したそれを、樹はじとりと見上げる。 「まあ、アルファなら家に連れ込んだオメガひん剥いて喰うくらいのこと普通にするんで、別にパンツがないくらいじゃガタガタ言いませんよ」 「されたことあるの?」 「まだありませんけど、まあこれから先ないとは言えませんね。んで無理やり頸噛まれて番にさせられて、子供産むために生かされるんでしょ。はーあ、嫌だ嫌だ」  好かれないために立ち回ろうと、岬生の前でわざとアルファを悪く言う。心配そうに聞いて来ていた岬生も同じ性のアルファを悪く言われるのはさぞ気分が悪かろう。  嫌われるまではいかなくとも、苦手に思われればいい。好かれなければそれでいい。本音ではあるけれど嫌われたくないからもっと酷いことは言わないが、絶対に好かれたくはなかったから。

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