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第3話

その時、ガチッと教室のドアの鍵を回す音がした。 レイは意識が朦朧とし始めていたが、教室のドアが開く音に身構えた。 だが、入って来たのが保健医のアレクで、レイは安堵の表情を浮かべる。 アレクは狼の獣人で、αだが、この学園で唯一心を許せる存在だった。 そして、レイが密かに恋心を抱く相手でもある。 アレクはレイがΩだということも、レイの体質についても理解していた。 元はリノンの街でも名の知れた名医だったと聞く。 「レイ、大丈夫か?」 アレクは入って来るなり、長い鼻面にいくつもの皺を刻んで低く呻いた。 「すごいフェロモンの匂いだ。頭がくらくらする……」 レイのフェロモンは、教室中に渦を巻いて、濃密な芳香を放っている。 花に似た芳しい香りが何倍も強くなったような匂い。ここまで強烈だと目眩がする。 レイの放つフェロモンに気圧(けお)されながらも、アレクはレイのすぐ近くまで歩み寄り、レイの体を抱き上げた。 「先生……アレク先生……。俺、怖い……っ」 「わかってる。レイ、発情期(ヒート)だ」 アレクの腕に抱き上げられ、ホッとして不覚にも涙ぐんだのも束の間、レイの体を突き上げるように更なる衝動が襲った。 「先生っ……お尻が。……お尻が、熱いっ……!体の中が変……!」 アナルから洩れた愛液は、制服のズボンから染みだし、床に小さな水溜まりを作るまでになっていた。 今まで体験したことのない体の反応に怖くなる。 それ以上に体の中を淫らに渦巻く性欲に翻弄される。 「先生っ、お願い、たす……けて……」 アレクはレイに抑制剤を飲ませた。 「直に効いてくる。それまで待つんだ」 「あ、いやっ……先生が、先生が欲しい……ッ」 一度発情した体は、中に精液を浴びることでしか抑えられない。 アレクのモノでアナルをぐちゃぐちゃに蹂躙して欲しかった。 はしたないと自覚しつつ、体は半ば暴力的に犯されることを望んでいる。 「俺、先生のことが……ずっと前から先生のことが好きだった。だから、先生とならシてもいいよ……」 いつもなら、何十にも強固に巻きついた理性の鎖が抑制して、こんなこと、とても言えなかった。 アレクが好きでしかたないこの気持ち。 誰にも打ち明けることなく、封印したままで、学園を卒業し、いずれは忘れてしまうかもしれない。 そんな儚い想いのはずだった。 でも、理性が完全にとんだ今、レイは土壇場で想いを告げ、アレクに対して肉欲を求めるだけの浅ましい存在になる。 「俺を抱いて……」 だが、次の瞬間、アレクの静かに紡いだ一言が、レイの心を粉々に打ち砕いた。

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