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第5話(アキ)

 1年で、キツカは、美しく成長していた。眩しい程の白い肌、艶やかな黒い髪、大きな瞳は涙で揺れていた。 ああ、俺のキツカ。  初めて会ったときから、俺はキツカに、ほのかにだが、確かに『運命』を感じていた。愚かでかわいらしい俺の『番』。この小さく貧しい村で、『人間』として2人で生きていこうと思っていた。いずれは、この村の長になり、傍にはキツカを置いて、慎ましい幸せを享受する。『獣人』は俺だけだから、奪われる心配もない。  キツカを虐げてきた人間達には、後でいなくなってもらうとして、今はまだ、キツカが発情期を迎えるまでは、このまま穏やかに暮らしていくのも悪くない。  そう考えていた。  それなのに、キツカは突然、姿を消した。  村の奴らに聞いても、知らないと言う。発情期を迎えていないキツカの匂いは、俺には辿れない。そもそも、栄養の足りていなさそうなあの身体で発情期を迎えたところで、まともに匂いを発することはできるのか。いや、変な場所で発情され、雄を惹きつけられても困る。  俺は我慢をした。村の奴らは、俺に何かを隠している。俺だけじゃない。女や子供に、伏せていることがある。どこか挙動が不審な彼らにそう感じていた。  そして、見つけた。  キツカの匂いを漂わせた男だった。どうやら、キツカはどこかに閉じ込められ、発情期中、村の男達の相手をさせられているようだった。それを聞いた途端、理性の糸がぷっつんと切れてしまった。場所を吐かせる前に、男が動かなくなってしまったので、仕方がなく、そこらへんに埋めておいた。  発情期をともに過ごしている割には、他の男達からは匂いがしなかった。村に戻る前に水浴びでもしているのか。状況が変わり、もうキツカのところには行っていないのか。まさか、キツカはもういないのか。  焦る俺の耳に飛び込んできたのは、甲高い女達の声だった。 「なにが『番』よ。さっさと、『獣人』様の餌になってしまえばいいのに」 「人の男を寝取って、いい気味」 「男のくせに、気持ちが悪い。汚らしい身体。餌になるくらいがちょうどいい」 「『獣人』様も、あんな残飯が相手で、怒らないのかしら」  俺は、女達から、キツカの居場所を知った。  今すぐに駆けつけたかったが、そのまま駆けつけては、何をするかわからない。とりあえず、心を落ち着かそうと村で暴れることにした。大きな犬のような獣の姿は好きではなかったが、そのときばかりは、いいものだなと思った。なんせ、ひと噛みでいい。  小屋は、山の奥深くにあった。古くからあるのだろう、キツカのものではない血や汚物の臭いに混じって、甘い香りがした。  小屋の中、そして鉄の柵の向こうにキツカはいた。 「キツカ」

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