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第52話 おめざ
良くない恋愛。
「……じゃない、よ」
ぽつりと呟いた。僕を抱き締めたまま、ぐっすり眠っている郁の寝顔を見ながら。目を覚ましたら、腕の中にいた。
あたたかくて、あまりに心地良くて、寝たくない。
「……」
今、何時くらいかな。六時前くらい、かな。郁はぐっすりだ。少しだけ口を開けて、スー……って、穏やかな寝息を零しながら寝てるのをじっと観察してた。
昨日、あんまり寝てないって言ってたもんね。それで、夜、たくさん、さ。
「自覚って、それはこっちの台詞だよ……」
女の子に人気あるじゃん。郁のことが好きって告白しに来ちゃうくらいじゃん。それで? イケメンで? クールで? でも、きっとそれを言ったところで「別に、俺は文しか好きじゃねぇ」とか言うんでしょ?
「っ」
自分で言って自分で無性に気恥ずかしくなった。何その、すごく愛されてるっていう自覚をさ、その無意識に持ってるんだよ。ホント……。
でも、すごく。
「んー……ふ、み……」
すごく、愛されてると感じる。
抱かれる度にそう感じるんだ。色濃く、深く。
「っ……」
熱くなってしまう。
昨日、部屋で、お風呂で、部屋に戻ってからも、何度も何度も、抱かれたから、余韻が鮮やかすぎて、たやすく火がつく。
だって、抱かれる度に快感が増して愛されてる密度が濃くなって、一年我慢してきた僕らには、そんなの貪るなって言うほうが無理でしょう?
「……」
口でしたことないんだ。郁には、昨日たくさん唇でも舌でも、そこらじゅうにキスをされた。自覚のない僕をたしなめて、郁のだっていう印をそこかしこに刻まれた。脚の付け根、すごいんだよ? 郁の齧る真似事が太腿の内側、柔肌のところに残ってる。胸にもたくさん。きっと僕には見えない場所にだって。
それがたまらなく嬉しくて、たまらなく気持ちイイんだよ? だから、郁にもさせてよ。
浴衣をはらりと捲って、それを――。
「ン」
朝、だから、少しだけ芯のある、それに、ペニスに唇で触れた。
「ん」
そのままゆっくり口の中に咥えて。
「んっ……ふ」
舌で舐めて濡らした。
「ふっ」
たちまち、口の中で大きく育つ郁のペニスに、お腹のところがじんわり熱を滲ませる。昨日、この硬い切っ先で何度も突かれた奥のところが。
「はっ、ぁっ……ン、く」
丸い亀頭のところにしゃぶりついて、エラの張ったところを舌でくすぐった。ここ、好き。ここで、中を擦り上げられるのがすごく、気持ちイイ。
ど、しよ。
「ぁ、ふ……く、いくっ」
触って欲しくなる。入り口のところがヒクヒクしてる。
「ふぁっ、ぁんん……ン、く」
そっと、身じろいで下着越しにキスマークがたくさん残ってるそこを撫でた。
ただ撫でただけなのに、そこは貪欲に反応した。郁のをたくさん締め付けた中のところが、こっちにもちょうだいって、お腹のところをきゅうきゅうさせる。欲しいんだってば、って駄々を捏ねるみたいに昨日の名残じゃ物足りないって。ちゃんと。
「ぁっ、ひゃ、やっ、郁っ?」
「無理」
「ひゃ、ぁ、あっ、ああああああっ」
孔を抉じ開けたのは郁の指。
「あっ、やっン、や、ぁ」
無理と言われて、火照った自分が一人耽った行為に引かれたんだと思った。朝から何してんのって呆れられたかと思って、ペニスを扱いていた手をパッと離そうとした。
「続けて」
「あっ」
違った。離そうとした手ごと郁の片手が包んで、ペニスをきつく扱かせる。
「い、くっ……起きて?」
「起きるだろ」
いつから? どこから、見てたの?
「自覚がないのはって辺りから」
「!」
「寝込み襲う系のエロい動画っぽかったから、見てたくて我慢してたけど、無理だった」
「何、それ」
やらしい動画って、それって、さ。
「その女優、少しだけ文に似てたんだ」
それって、僕のこと――。
「寝てるフリしときたかったのに」
「ぁ、ンっ……な、で」
「照れてはにかむ文も最高だけど」
「あっン」
指に孔の口を広げられて、あられもない嬌声が零れてしまう。郁の手に包まれペニスを握り締めたまま扱く手伝いをしたら、さ。
「好きなだけ気持ち良さそうにしてる文もすげぇ最高だから」
深くなる快楽と、愛されてるっていう自覚が、抱かれる度に増すから。もう、たやすく火がつくようになった。すぐに火照ってしまうようになった。
「あ、ンっ……郁……」
「?」
ね、僕は郁のものだよ。僕を独り占めしていいんだ。
ね? そしたら、郁のことを独り占めさせてよ。
「その女優さんの、だったら、この後、どうする、の?」
「……」
女優さんでもなんでも、ダメ、だよ。
「文……」
「教えて?」
郁を興奮させるのは叶うことなら、僕だけ、がいい。
「して、あげる、から」
ごくりと喉を鳴らしたのが分かったから、そこに噛み付いた。舐めて、キスをして、そのまま唇にもキスをする。舌を差し込んで角度を変えて上から。そして――。
「そのまま、浴衣着たまんま、ここ、跨って」
教えて?
「そんで、騎乗位で、腰を」
郁がしたいセックスをしてあげるから、だから、僕に郁のこと独り占めさせて。
「ぁ、あ、あ、あああああああっ」
自分から抉じ開けた。身体をくねらせたせいで肩から滑り落ちる浴衣のことも気にせず。郁のお腹に手をついて、仰け反りながら、腰をゆっくり沈めた。
「あっ……ン」
自分から郁のペニスを咥え込んで、奥まで刺したら、ただそれだけで。
「やば、最高……」
朝から蕩けてしまうほど、射精してた。
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