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第69話 整理整頓、お片づけ

 あの子が好きなのは、どっちなんだろうか。お洒落が好きな女の子なのか、野球部の男の子なのか。  ――無理ですよ。だって、あいつの好きな人知ってるし。  諦めていた。  ――俺も、それを手伝いできたら、嬉しいから。  良い子、だった。とても優しい良い子で、僕とは、大違いだ。 「っ……ン」  僕は片想いらしい片想いをしたことがない。恋なんてもの自覚もせずに、恋愛感情だなんと思うこともなく、無意識でもう恋をしてたんだ。十六も離れた年下の男の子に。けれど、僕は悪い子で。 「はぁっ……」  諦めも、悪い子だから。  知ってて、悪いことをする。 「ただいまー」  わかってて、イケナイことをする。 「言いたいことあるって呼んだのは秀だけだったのに、あいつ、わんさか人を呼ぶから、すげぇ大所帯になってさ、どっこも……入……れなくて」  そろそろ帰ってくるって知ってて、してる。 「あっ……ン」 「……玄関、明かりついてるし、今日、夜、どっか行くとか言ってなかったけど」 「あっン」  秀君たちと遊んで、帰りが遅いと言っていたけれど、それでも、この時間くらいだとわかってて、したんだ。 「おかえりって、言われないから、どうしたのかと思った」  オナニー。 「文……」 「ぁ、郁っ、見ちゃ」 「ダメ? ホントに?」 「うん。ダメ……」  二人で眠る布団の上、郁の枕にぎゅっと抱きついて、ちらりと、振り返って郁を見た。僕は、部屋の出入りの扉へそっぽを向いて、孔を――。 「文、すっごいやらしいんだけど」 「あっ……や、らしくないっ」 「そう?」  孔に指を挿れて、るの。 「……やば」  二本じゃ、郁のみたいに、ならないけれど。 「文、エロいよ」 「あっン」 「どうしたの?」  奥に欲しいけれど、僕の指はそこ、できない、の。 「ねぇ、文」 「あっ」  郁が服もそのまま、布団の上に膝立ちになって、ベルトを外してくれた。 「文?」 「して? ここ、欲しっ」  僕は諦めが悪くて、我儘だから、欲しいっておねだりした。  僕は、諦めが悪いから、きっとずっと郁が好きだよ。 「文」 「ぁ、ああああっ」  我儘だから、郁が誰かと幸せになることを心から喜ぶなんてできやしないんだ。 「っ、文、奥、狭い」 「ぁ、ン、だって、届かな、いっ」  実らない片想いはいつか整理をして片付けないといけない。 「郁のでっ」 「っ」 「郁ので、奥、解して」  整理整頓、お片づけ、僕はそのどっちもせずに駄々をこねて、この子が欲しいと、ねだるんだろう。 「ぁっ、あっ、あ!……あン」  布団にうつぶせで寝そべって、脚だけを本当にあられもないほど開いてる。小刻みに打ち込まれる郁のペニスに震えながら腰を揺らして。 「郁……」  悪い子、でしょ?  恋しくなってしまったんだ。あんなに切なく好きを仕舞わないといけないこともあるのだと思ったら、今すぐ自分のところに置いて、誰にも取られないようにってしたくなった。僕のも誰かに持っていかれてしまうかもしれないって思ったら、たまらなく、抱き締めたくなった。  僕のだと、この身体でたしかめたくなった。 「あぁぁぁあっン」 「ここ、好き?」  ようやく満たされた奥が悦んで、しゃぶりつく。 「文のこの、綺麗な指じゃ届かないとこ、好き?」  シーツをぎゅっと握る手に手を重ねて、上から覆い被さる郁の深い腰使いに身悶えてる。 「ン、好きっ」  根元まで郁は僕の中。奥の、指じゃ届かないとこまで、郁のが来てる。 「あ……好き、ぃ」  ずちゅりと卑猥な音を立てて、ペニスが孔の奥へと突き刺さった。そして仰け反る僕の胸にある突起をしっかりと引っ掛かれて、指で火照るだけ火照らせて、不十分に柔くされた内壁が気持ち良さそうに郁のことをきつく締め付ける。 「あ、好きっ、郁、ン、好き」  もっとして欲しくて、背中を捻って後ろから甘く攻める郁を見た。 「郁は?」  狂おしく腰を打ちつけながら、服を着たままだったから熱さで汗が額を伝ってる。  問いかけると、険しい表情で笑って、欲しがった奥を深く強く貫く。 「……ぁっ!」 「文が……」  苦しいくらい奥のところなのに、苦しさすら気持ちイイなんて。 「言ってくれた好き全部を合わせても足りないくらい、好きだよ」 「あっぁ、や、ああああああ」  けれど、腰をすごい力で掴まれて、硬くて鋭い一突きに貫かれて、射精した。ドクンドクンと脈打つ自分ともう一つの鼓動を感じて、中に放たれる郁の熱に、軽い眩暈がするほど、また、放っていた。

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