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第72話 ねぇ、褒めて
不器用だと照れて拗ねたような顔でこっそり告げられた。縫いが下手だから、文化祭の浴衣姿を見せたくないから、なんて隠してたんだ。
浴衣で喫茶店の店員さんをするんだって。
内緒にしてた。知られて、浴衣ひとつちゃんと縫えないんじゃ、と呆れられてしまわないように。するわけないのにね。
縫いができないようじゃうちでは働き手になれないと断られてしまわないように、なんて。断るわけないのに。
怒った顔で、そんな心配をしていたと教えられて、恋しくなった。
僕を畳みの上に押し倒す郁の赤くなった頬が可愛くて、抱かれたくなった。
昨日も、したけれど。お布団で。
週末だから、明日の学校の心配もなく、早起きもしなくていい週末はいくらでも夜更かしができるでしょう?
だから、昨日もしたのだけれど、
ここで、今すぐに、抱いて欲しくて、ドキドキしながら心待ちしていた。触れるだけじゃない、絡み合う、濡れたキスを。
「あ、はぁ……ぁっ」
鈴虫の音が遠くなる。
「ぁ、ンっ……郁っ、それ、ダメっ」
そして、甘い蜜音が近くなる。
「あぁっ……ン」
それと、甘ったるい自分の溜め息。
「い、くっ……ン」
あぁ、蜜音は、柔くペニスに悦ぶようほじくられる孔からだけじゃなく、滴る僕の体液を吸ってくれる郁の舌からも聞こえる。
「あぁぁっ」
織物が終わった後、太市君が一杯お茶を飲んでいた居間に、やらしく濡れた音がしてる。
「あっ……ン」
気持ちイイ前戯に悦ぶ僕の声が。
「ぁ、あっ、そこっ」
「……」
「んんんんっ」
昨日の名残がある孔を指で慣らされる。もうそれは愛撫でしかなくて、前立腺をいじられる度に透明な体液を滲ませるペニスを郁の口の中で扱かれて、腰が浮き上がる。やらしいことなのに、心地良くて、もっとしてって、脚がしどけなく開いてしまう。
「ンっ……? 郁?」
もっとしてって、思ったのに。
「あれ、言ってみてよ」
「……」
「褒めて」
「あっンっ……ン、ん」
ペニス、溶けちゃいそう。濡れて吸われて、快楽に溶けちゃう。
「ン、郁、じょ、ず……ン、ぁ」
じゅぷ、って音を立てて、郁の唾液に僕のペニスが溶かされる。たまらなくて、切なくて、口でしてくれる愛しい恋人の頭を両手で抱えた、開いた脚の間で上下する頭を、柔らかい髪に指を絡めながら、郁の舌の心地良さを褒めてあげた。
「ン、ぁ、上手、だよっ、郁……っ」
自分の言葉にさえ煽られる。フェラチオされながら、その舌を唇を褒めてあげる自分の声が言葉がひどくやらしくて、おかしくなりそう。
「あンっ」
上手って言ったのに。
「ぁ……も、郁」
なんで、止めるの?
気持ちイイって、褒めたのに。
「あっ……っ」
じっと見つめる郁の前で、もっと大胆に脚を開いた。舌で溶かされそうなくらいに愛撫されたペニスをツンと勃たせたまま、火照って仕方ない身体を見せて、胸を自分の指で撫でる。掌に、コリっとした小さな粒が触れた。
「あン」
意地悪、だ。
乳首、こんなに硬くしてるのに。昨日の快楽をまだ覚えてる中がこんなに熱くなってるのに。
「手……」
フェラチオで濡れた唇で微笑んで、欲しい言葉を待ってる意地悪な郁が、たしなめてとねだってた。
叱られるのを待ってる意地悪で、裁縫はぶきっちょだけれど、とても器用な指を捕まえて、キスをした。舌で指と戯れて、濡れた指を――。
「手、お留守、だよ? ちゃんと、いじって?」
指をコリコリになった乳首に押し付ける。
「あ、あぁぁぁっ」
「たまんない」
「ぁ、あっ、あぁああぁあっ」
開いた脚の開いた、もう指に喘いでた孔の口に、郁のそそり立った熱が突き刺さる。
「すげ……中、トロットロ」
「ン、ぁ、だって」
唾液に濡れた指じゃ硬くなってる乳首は上手に摘めなくて、でもそれがもどかしくも、とても気持ちイイ。滑って擦られて、もっとしてと身体が郁のくれるものを全部欲しがる。
「ぁ、ン、気持ちイイん、だも、っン」
ペニスも指も舌も唇も全部でして欲しくてたまらない。
「あン」
うなじを掴まれながら、腰を狂おしく打ち付けられて、逃がすことのできない抱かれる快感が溜まってく。
「あぁぁっン」
ペニスの先から滲んで溢れて滴るくらいに、溜まっていく。
「ひゃぁっ……ン」
僕からも抱きついた。ずちゅぐちゅって卑猥な音を居間に響かせながら、抱きついて、その耳元にキスをする。
「ン、郁っ」
昨日よりも奥がいい。
「ぁっん、そこ、好き」
好きなだけ抱き潰して欲しい。
「ン、中に、出してっ郁」
滴るくらいに中に放って。
「あ、あっ、ン、激しいっ」
「っ、も、出る」
「ぁ、あ、あ、あ、あ、あ、あっ…………!」
声も消えるくらいに奥まで抉じ開けて? そしたらすごく気持ち良くて、すぐに――。
「あっ……ぁっ……」
中で、ドクドクって郁のが暴れてる。
「ぁン」
溢れるくらい、僕の中で郁が射精してる。
「ン」
それはたまらなく気持ち良くて嬉しいから。
「上手……ねっ? 郁」
そう中にいる郁をお腹の上からいいこいいこって撫でて褒めてあげた。
「ぁっん、ぁ、嘘、なんで、また」
「そんなの」
「あぁぁン」
「褒められたら、嬉しくなるでしょ」
さっきまでのぶきっちょが愛しいほど可愛かったのに、ニヤリと笑った顔があまりにカッコよくて、どうしよう。
「あ、また、出ちゃうっ」
もっと褒めたら、もっと抱いてくれる? のかな? って、胸が高鳴ってしまった。
「嘘みたい」
「だから、言っただろ」
ちょうど、服のボタンが外れちゃったんだ。服を着ようと思ったらポロリと取れた。
「本当にぶきっちょ」
「だから! 言っただろっ!」
それを郁につけてもらったら、驚くほど本当に不器用だった。これは、驚愕するレベル。
「あらあら……」
「れ、練習するっつうの」
かなりのものだ。
すごいね。知らなかったよ。
「お裁縫はとってもへたっぴ」
「! だーかーらっ!」
ものすごくすごーく不器用だけれど、それが愛しい人ならば、その縫い目すら愛しく感じるなんてこと、あるんだね。
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