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第9話

「あのさ、悪いんだけど俺の服を取ってくれないかな」  ヨハンが持ってきてくれた上着のポケットにはトランプが入っていた。 「良かった。これ、持ってこれたんだ」  ヨハンはこれが何かわからず首を傾げていたが、恒輝がカードをさばき始めると食い入るようにして見ていた。 「す、すごいです! コウキ様、これは何かの魔法ですか?」 「魔法じゃないよ。これはトランプというゲームに使うカードで、これは見栄え良くカードを混ぜる方法。俺の仕事だったんだ」 「そんな魔法のようなお仕事があるのですね」  目を輝かせているヨハンを見て、恒輝も嬉しくなった。 「魔法ってほどでもないけど。混ぜるだけじゃないんだ。混ぜたカードをこうやって配ってゲームの準備をするんだよ」  カードを実際に配ってみるとヨハンは楽しそうに尻尾を振りながら一生懸命恒輝の手元を見ていた。 「そのゲームって難しいですか? 教えていただきたいです」 「いいよ、教えてあげる」 「ありがとうございます」  ヨハンは嬉しそうにしながら恒輝がトランプを配り終えるのを今か今かと待っていた。  それから恒輝はヨハンに簡単なカードゲームを教えてみたがすぐに理解した。それならばとポーカーハウスでもメジャーなカードゲームの一つであるブラックジャックを教えると、それも一度で理解した。そして何よりもリフルシャフルが気に入ったらしくそれを何度も見たいと強請った。  ヨハンに何度目かのリフルシャフルを見せていると、がたんと音がして部屋の扉が開き甘い香りがふわっと香る。 「随分と楽しそうだな」  振り返るとヴァシュカと一緒にハクと思われる緑色のローブを羽織った小さい狐の獣人が皿いっぱいの果物を持って部屋に入ってきた。  ヴァシュカを見ると嫌でも昨日の出来事を生々しく思い出してしまいまた頬が熱くなる。 「何をしていたのだ?」 「ヴァシュカ様! ハク! 見てください! コウキ様はすごいです」  するとヨハンは身振り手振りを交えて興奮気味に話し、そして今教えたカードゲームをハクに教え始めた。  そしてヨハンは恒輝がやったように見よう見まねでリフルシャフルをやってみたのだが上手く行かず、ハクにも見せてあげて欲しいというのでやってみせれば、ハクだけでなくヴァシュカまで興味深く食い入るように見ている。 「へぇ、本当に魔法でもみているようだ」  そんなに難しくもないシャフルだったので、そうまじまじと見られると少し照れてしまう。 「大げさだって。練習すれば、誰だってできるよ」 「本当ですか! では、是非とも教えていただきたいです! 他の兄弟達にもみせてやりたいので」 「うん、いいよ。ハク以外にも兄弟がいるの?」 「はい、弟があと八人おります」 「八人⁉」  そんな話を交えながら終始興奮し耳も尻尾もパタパタと動かしているヨハンをキラキラした目で見ていたハクだったが、ふと本来の目的を思い出して耳をピンと立てた。 「兄様! 思わずはしゃいでしまいましたが今日はコウキ様のお身体を診察に来たのでありました」  するとヨハンも、ハッとして耳がピンと立つ。 「ああ、そうだった。申し訳ございませんでした」  はしゃぎすぎたことを謝る二人を見て、ヴァシュカは構わないと言って笑った。  するとペコッとヴァシュカに向かって頭を下げたハクは恒輝の前にやってきて診察をさせてほしいと言う。  そして前に見たのと同じように緑色の球状の光を恒輝の身体にかざして目を閉じた。

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