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第5話

ペットボトルの蓋を締めると、長岡は手を合わせた。 「ご馳走さま。」 「ご馳走さまでした。」 「腹いっぱいだな。 少し歩くか。」 「はい。」 天気は快晴。 真っ青な空に薄紅色の花がよく映える。 長身の2人にはそのにおいも濃く薫り、春のにおいを胸いっぱいに吸い込んだ。 頭上を淡く染める桜に三条は嬉しそうに笑っている。 本人はコンプレックスらしい白い肌によく似合う花。 厳しい冬を乗り越えた、あたたかく穏やかな春がよく似合う子だ。 花を見上げやわらかや空気を纏う姿にスマホを向けると1枚切り取った。 画面の中で桜にカメラを翳していた三条は手招きをすると空を指差す。 指差す方を見上げると月まで笑っていた。 なんだ、月までご機嫌なのか。 「正宗さんも撮りましょうよ。」 「バレんぞ。」 「今なら大丈夫ですよ。」 こんな道端で花見をしている奴も少ない。 それに、確かに今なら人の姿はない。 「正宗さん、くっ付いても良いですか?」 「当たり前だろ。 ほら、一緒に写んだろ。」 大きな公園や、遊歩道じゃなくたって構わない。 この美しい季節をまた三条と過ごせる事がなにより嬉しい。 画面には笑顔の2人がくっ付いている。

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