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第6話
「兄ちゃん、ただいま!
玄関にある鞄なに?」
「おかえり。
あれ、母さんの。
なんかあったらあれ持って病院来てってさ。」
「あぁ、なるほど。」
4月から中学生になった弟はおさがりの学ランを着てリビングに顔を出した。
新しい制服を買うと言ったら兄ちゃんのお古で良いと聞かなかった弟。
三条は高校に入学してから身長がグングン伸びた為、中学の制服なら着れている。
出産予定日まで2週間を切り、いよいよ準備された荷物。
部屋も角を保護したり戸棚にチャイルドロックをかけたり少し早いかとも思う準備が着々と進んでいた。
玄関の横には必要な物を詰め込んだ大きな鞄もその1つ。
三条は、万が一に備えて自由登校と春休み期間を使って自動車免許を修得したが出産間近の母親を乗せての運転は正直不安があるので、今から緊張している。
だからといって、母が1人の時に陣痛がくるのもそれはそれで心配だが。
「で、母さんは?」
「和室で横になってる。
腰痛いって。」
「大変なんだな。」
本当にそう思う。
10ヵ月であれだけ腹を大きくして、子供に自分の栄養を与える。
病気ではないから不調を治す薬もない。
母さんの場合は歳もある。
夕食準備の為、シンクの前に立つ三条の隣で優登は手洗いうがいを済ますと手についた水滴をパッと弾き飛ばした。
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