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第8話

支給のパソコン横にはクラス写真が飾られている。 薔薇の花束を抱えた自分を取り囲む様に笑うA組の生徒達。 新しい定位置は、此処だ。 準備室は狭いが日当たりだけは良い。 夏を考えればうんざりだが風通りも悪くはないので夏にも期待だ。 部屋中にインスタントのコーヒーのにおいが満ちて、ふと視界にマグカップが入った。 「先生もどうぞ。 インスタントですけど。」 「ありがとうございます。 いただきます。」 熱々のそれを受け取り頭を下げる。 コーヒーを煎れてくれた同輩は、自分のついでだからと他の教諭にも手渡しに行った。 部屋ではインスタントばかりで慣れた味の筈なのに、前の職場では亀田の煎れてくれるものばかり飲んでいたせいかこの味に今だ慣れない。 かおりが鈍いと言うか、あの味が恋しい。 完全なる中毒だ。 口を湿らせると、再度パソコン画面に向かう。 元A組も今頃慣れない場所で頑張っている筈だ。 あの生徒も。 いや、今は学生か。 追い付かれた時に恥ずかしくない様にいたい。 年上の意地やプライドの問題ではなく。 目標だと言ってくれた三条への敬意だ。
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