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第11話
電車に揺られ長岡の住む町まで移動する。
だけど、長岡の部屋に向かうのではない。
あの部屋から見える大学に向かう為だ。
入学から1ヶ月経って、新生活にもやっと慣れてきた。
朝一の授業が怠いだとか思う事もない真面目な三条は、長岡に授業選択の事を相談すると1学年の内にとれる教科はとっておいた方が後々楽だと言われ選択授業を決めた。
知らない事を知る事は単純に楽しい。
分からないから問題が解ける様になると楽しい。
三条の勉強への欲求は単純だ。
目標もある。
見誤りさえしなければ大丈夫。
そりゃ、毎日会っていた長岡と休日しか会えなくなったのは寂しい。
週7が週2は激減だ。
あの声も、黒板に書かれる文字も、授業も、4棟トイレでの逢い引きもずっと愛おしい思い出となった。
でも、長岡が早く帰れそうな日はそのまま長岡の部屋にお邪魔して一緒に夕飯をとったり─勿論、自宅に帰ってからも夕飯を食べるが─少しの間会える。
今までが恵まれ過ぎていたのだ。
吊革上のパイプを掴みながら、目の前の窓から流れる景色をぼーっと眺める。
田んぼの間を抜け、高校の最寄りを過ぎ、住宅が増えていき、そして街に近付く手前で車掌は大学前と読み上げた。
ポケットから何も落としてない事を確認してから駅に降りると、同じく学生がぞろっと降りた。
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