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第44話

インスタントコーヒーをマグに落とすとお湯を注ぐ。 そんなありふれた行動の1つひとつも、隣に恋人がいると色を変える。 「牛乳いただきます。」 「どうぞ。 あ、俺も貰う。」 熱々のコーヒーに冷たい牛乳を注ぎ温くしたそれに、長岡は更に氷を追加した。 「遥登もいるか?」 「ありがとうございます!」 「ん。 どういたしまして。」 三条を調理スペースに上げるとその目の前でコーヒーを啜る。 「あ…」 「もう19歳か。 此処に座んなくても殆ど視線同じだし、嬉しいような寂しいようなってしみじみする。 在学中にすげぇ伸びたしな。」 「そんな事思ってたんですか…?」 「まぁ、一応担任だったし。」 長岡は真面目な人だ。 そんな事知っている。 だけど、今の話を聴いてよりそう思った。 生徒の成長を寂しいと思ってくれている。 そして、同時に嬉しいと。 本棚のファイリングも、参考書の類いもその証拠だ。 「正宗さんは、自慢の先生です。」 「マジか。」 「はい。 マジです。」 嘘はない。 胸を張って言える。 自慢の先生だ。 なんせ俺の目標でもある。 腕を引いて近付いて貰うと感謝の気持ちを伝え、抱き締めた。 「可愛いな。 はるちゃんはまだ未成年だもんな。」 髪を梳かれその手のあたたかさに身を任せる。 あたたかくて大きな人。 いいにおいがして、格好良くて、最高の恋人だ。

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