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第45話
ピンクに染まる空を三条は眺めていた。
ピンクにオレンジ黄色が混ざり、天辺は群青色。
サラサラした髪がその色を浴び、夢の様に儚く恋人を縁取る。
何を、考えているのか。
ただじっと見ている。
遥登は温容な子だ。
知れば知る程、惹かれる。
陳腐な表現だが底無し沼の様だ。
蠱惑的な魅力がある。
人当たりの良い笑顔にフラフラと近付けばもう離れる事は出来ない。
引き込まれたら、もう後戻りなんて忘れてしまう。
遥登に沈溺する。
俺自身が望んだ事だ。
色を深くしていく空に目の前の肩が跳ねた。
それと同時に聴こえるくしゃみ。
ゆっくりと振り返る恋人。
あの色は今だ目に焼き付いてにおいさえあの日に戻れるのに、目の前の現実は優しく微笑む。
逆光で見えないがきっとそうだ。
自分も同じものを愛しい恋人に返した。
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