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第52話

背後をとられ心臓がドッドッと騒ぐ。 風呂場で着衣を身に纏っている方がおかしいのは確かだが、恋人同士となると急に恥ずかしくなる。 1人なら快適な広さの洗い場に腰を下ろした三条の後ろには、同じく何も身に付けていない長岡がいた。 自意識過剰…だろ 一緒に風呂に入るだけ、一緒に風呂に入るだけ え、わ…っ 身体を縮込ませていると後ろから腕が伸びてきた。 その手は三条の横を通り過ぎ、シャワーのカランを捻り湯を出す。 水からお湯に変わった途端、曇る鏡にホッとした。 ついでとばかりにボディソープを手にとると、洗うぞと声をかけてから背中に触れられた。 ヌルヌルとした手で背中を撫でられゾクッとした刺激に思わずアツい息が出てしまう。 肩甲骨から滑り降り、背骨に添って這い上がる。 やましい手付きではないのに。 「恥ずかしい?」 うんと頷くと、笑いを含んだ声が嬉しそうに跳ねた。 「俺が、この身体に発情するの知ってるからだろ。」 図星だ。 こんな身体でも発情してくれると知って恥ずかしくなった。 肋が浮いてガリガリでみっともない身体を愛しいと言ってもらえるだけで充分嬉しいのに長岡は発情までしてくれる。 「それで良いと思うけどな。」 「それは、どういう意味ですか…?」 「ん? そのままの意味だよ。 俺に愛されてるって自信もて。」 両手に塗り広げられたボディソープを背中に塗りたくる冷たい手に後ろを見る事が出来ないが、小さくだけどしっかり頷いた。 長岡に愛され、自分も自身の事を少しすきになれた気がする。 愛情は自信にも、力にもなる。 方向や受け取り方を見誤りせずにいれば、無敵の味方だ。 背骨に添ってぬるぬると這っていた手が腕をすべり、手のひらをとる。 絡ませる様に洗われ、勇気を降り頻りその手を握るよう動かすと後頭部にキスされた。 「全身俺のにおいにしてやるからな。」 「…っ!?」 「背中まで真っ赤じゃねぇか。 ほっんと、遥登は面白いな。」

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