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第53話
「すげぇ」
モコモコと全身を包む泡。
ふわふわで、時々しゅわわ…と萎む泡が肌を刺激して擽ったい。
しかもすごくいいにおいがする。
すっかり機嫌の良くなった三条は長岡の好きな笑みを浮かべていた。
「楽しいか?」
「はいっ」
さっきまで照れていた三条だが泡が気に入ったのか楽しそうだ。
そうして楽しんでいる姿は子供みたいだ。
数百円でこんな喜んでくれるなら幾らでも買ってくると、その様子を噛み締める。
縁に肘をつきその手に顎を乗せた長岡は丸い頭を眺めながらそのしあわせを何十にも咀嚼した。
「泡風呂ってなんだかテンション上がりますね。」
ポタ…と髪から滴る水滴が首から肩にそして背中を滑って泡の中へと消えた。
そのなんともいやらしい事。
ましてそれが純真無垢そうな三条のものとなれば格段だ。
自分から距離をとった端にいる恋人の腕を引き胸に抱き寄せ肩を抱く。
「そうだな。
なんつぅか、やらしい。」
「やらし…っ、……やらしいのは正宗さんの方ですよ。
泡風呂、すごく似合ってます。」
照れた様に口元を隠した恋人の顎を掬い目を合わせる。
ビクッと肩が跳ねたが構わず顔を近付けた。
「俺のナニがやらしいって?」
「ぜん…ん、……ン…」
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