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第54話

触れ合う素肌から心音が聴こえる様で止まらない。 「ぷはっ…、正宗さんなにすンんっ」 薄い身体を浴槽に押し付け唇を貪られる。 何時もと違う雰囲気のせいもあって、すごくいやらしい気持ちになってしまう。 長岡と壁に挟まれ顔を横にして息を吸おうと試みるが、顎を捕まれているせいでそれも叶わない。 ただ 「い、き……ンんっ、ぅ"」 浴室に響く自分の声もつるつると滑る湯底の感覚も羞恥心を煽っていく。 ふわふわと香る薔薇のにおいに意識までふわふわとしてきた。 舌を吸われたかと思えば甘噛みされる。 それでも足りないと上顎を舐め上げられると、棒の様な脚がビクッと脇腹にぶつかった。 それが合図の様にゆっくりと唇が離れていく。 「やらしいっつぅのは、今の遥登みたいな事を言うんだって。」 「………その言葉、そのまま正宗さんにお返しします」 風呂であたたまったお陰もあり、頬を上気させた姿は色っぽい。 濡れた前髪を掻き上げるその仕草さえ凄艶だ。 セットしている時の様でとても格好良い。 「正宗さん、」 鼻が触れ合う程顔を近付けた三条は小さな声で強請った。

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