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第67話
6月に入って県内にも梅雨がきた。
恵みの雨だ。
通り雨が地面に落ちてはスニーカーを濡らす。
湿っているのか冷たいのか判断はつきにくいが、多分前者だ。
天気予報を見て折り畳み傘をリュックに入れていた三条は身体こそ濡れては居ないが、雨のにおいを全身に纏っている。
連日の暑さがぐっと抑えられ過ごしやすい気温なのは嬉しい。
傘を閉じ数度降ってから呼び鈴を押した。
誰かを確認する事もなく扉が開き、笑顔が現れる。
同時に三条にも花が咲く。
「はよ。
遥登」
「おはようございます」
「タオルいるか?
待ってろ」
室内へと入る様に腕を引かれ、三条はその場で立ち尽くす。
靴下を脱ぎたい。
湿った靴下で部屋を汚してしまいそうだ。
どうしようかと玄関で待っていると直ぐ様タオルを持って長岡が戻ってきた。
「ほら、タオル」
頭に被せられたタオルに顔を上げると、上がり框の分だけ高いところにある顔が近付いてくる。
懐かしい身長差だ。
一瞬見惚れてしまった。
「雨のにおいすんな」
「あの…、靴下を脱いでも良いでしょうか。
なんか湿ってて…」
「ん?
あぁ、勿論。
スニーカーも濡れてんだろ。
浴室乾燥かけるから持ってこい」
浴室で丁度干されていた長岡の洗濯物の下に三条のスニーカーが並んだ。
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