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第68話

「水道借ります」 「ん。 毎回律儀だな。 勝手に使って良いって。」 遠慮はするが、手洗いうがいは洗面所ではなく自宅と同じ台所でする。 ハンドソープでしっかりと手を洗いうがいを済ませる頃には、三条のマグにはよく冷えたサイダーが注がれていた。 シュワシュワと爽やかに弾ける酸が涼しげだ。 「ありがとうございます!」 「どういたしまして。 食うか?」 そう言って冷蔵庫から取り出されたのはさくらんぼ。 「さくらんぼ! 良いんですか」 「勿論、どうぞ」 「あ、そういえばもうすぐ太宰の誕生日ですね」 桜桃忌。 太宰の誕生日であり、忌日。 正確には亡骸が発見された日だが。 彼の忌日は夏の季語となり、そして沢山の読書家が彼を思う日となった。 長岡も三条もその1人。 「何時か、さくらんぼ供えに行こうか。 それと、」 「味の素」 「そう。 味の素」 楽しみだ、と2人で笑う。

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