手洗いうがいをしている間もチラチラと視線を寄越してくる。 冷蔵庫から麦茶のペットボトルを取り出す時はガン見だった。 本当に解りやすい子だ。 「なんだよ。 似合わないか？」 「そんな事はありません。 格好良いです」 「じゃあ、どうした」 「見慣れなくて。 あの、えっと…」 麦茶の入ったマグを手渡すと、三条は目を泳がせた。 何時も真っ直ぐに目を見て話す三条が珍しく目を逸らす。 そこまで違和感があるだろうか。 夏休み明けには何時もの長さになるようにしてもらっているし、短いと言ってもそんな大胆にカットされている訳でもない。 何時もより気持ち短いだけ。 ヘアセットをしてしまえば、短さも周囲には分からないだろうと思っていたばかりに三条の反応が意外だ。 「かっこ、いいから…狡い」 「は？」 「だって、誤魔化すものがないのにこんな、格好良くて…狡いです」 格好良いから狡い？ 何を言い出すかと思えば。 三条は時々無自覚に誘う。 いや、勝手に誘われているだけなんだが。 でも、そんな事を言われてグッとこない男はいないだろう。 恋人に褒められて嫌な奴はいない筈だ。 「夏休み限定だ。 遥登は誰よりも沢山見れるな」 「わ、溢す…っ」 髪を掻き回すと、麦茶を溢さない様に慌てる三条に愛しさが込み上げる。 なんでこんなに気持ちばかりが溢れるのだろう。 誰かを大切にしたい、なんてそんな事を本気で思う様になった。 遥登の幸福をこんなにも願う。 最初は手に入るならなんだって良かった筈なのに。 この手に堕ちた喜びは何時から形を変えたのだろうか。 「見慣れない俺と、イイコトしませんか？」