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第156話
夏期休業と言っても職員は仕事がある。
あまり構えなかったのは事実だ。
触れ合える事自体が嬉しいのだろう。
それは、俺も同じだ。
ぐいぐいと手の平を押し、マッサージしながらハンドクリームを塗り広げてくれるあたたかい手。
やわらかく弧を描く口元。
嬉しそうな三条の顔を見られる事が嬉しい。
「痛くないですか?」
「大丈夫。
丁度良いよ」
さっきの顔をするとは思えない無垢な顔で笑う。
「なぁ、末の弟は遥登に似てんのか?」
「俺より次男似ですね。
目元とかそっくりですよ」
「じゃあ、遥登に似てんだな。
文化祭であった時そっくりだったぞ」
「そうですか?」
「そっくりだ。
優しそうな子だったな」
身内を褒められ嬉しそうにはにかんだ。
クリームがまだ薄く残る手─一番汚れていない小指─で傍らのスマホを操作すると待ち受け画面を見せてくれた。
そこには小さな弟を抱く遥登と、そっくりな弟が楽しそうに笑っている。
「やっぱりそっくりだ。
遥登に似て良い子に育つぞ」
遥登の兄弟なら絶対だ。
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