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第186話

短い恋文の書かれたオムライスをスプーンで掬う。 三条の作る食事はどれも塩梅が良い。 少し甘めだが、塩気がぴたりと好みにあっていて美味い。 こういうのは天性のものだ。 三条は両親から沢山のものを与えられ自分の力に変える それは三条の努力だ。 与えられたものに胡座をかかず生かす。 自惚れずしっかりと自分の足で地面を踏み締める三条は誇らしく、そして憧れでもある。 「うめぇ」 「さっきからそればっかりですよ」 「実際美味いからな。 ほら、あーん」 目尻を微かに赤くした三条は一呼吸おいてから、ぱくっと食い付いた。 「美味いだろ?」 「……正宗さんのカレーの方が美味しいです」 「そうか? 俺にはご馳走だけどな」 また一口頬張り噛み締めた。 こんなに美味い物を、自分のカレーの方が美味いだなんて。 いや、きっと同じ理由だ。 「何時でも作りますよ」 「俺も、何時でも作るから食いたくなったら言えよ。 目玉焼きものっけてやる」 「約束ですよ」 「あぁ、約束」 オムライスとからあげなんてわんぱくだなと言うと、来年はハンバーグと海老フライも付けますと言われた。 まるでお子様ランチだ。 でも、楽しみ。 「正宗さん、」 「餌付け?」 「…です」 「いただきます」 ありふれた日常を特別な日に変えてくれる優しい恋人と食べる飯は、この世の何より美味かった。

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