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第187話

大学生には少し値段がしたが、これなら長く使ってもらえると選んだプレゼント。 あまり自分には金を使わない三条の通帳にはコツコツと貯めた金額が記載されていた。 元々それは進学費用の足しの筈だった。 大学資金の足しにと申し出たそれを、両親は笑顔で断った。 20歳迄は育てる義務がある、産まれた時から毎月分少しずつ自分の名義で貯めた進学費用もあるとはじめて通帳の存在を知ったのもその時。 大きくなって親の助けが不必要になった今楽しみは成人式のみ。 それを済ませればもう自分の道だ。 それまでは子供でいてくれ、それ以降は自分の道を自分で選び自分の足で歩きなさい。 そう、背中を押された。 だからと言って無駄使いには使わない。 大学で必要な本や資料を買うのにも使っているが、両親や兄弟、友人、大切な人の為に使うと決めた。 何時か恩返しが出来たら…いや、する。 洗い物を済ませた三条は部屋の隅に置いておいたそれを手に持って、長岡の隣に座った。 主がいるとこの部屋はとても鮮やかだ。 「正宗さん、これどうぞ」 「ん?」 「誕生日プレゼント、です。 受け取って頂ければ嬉しいです」 綺麗に包装されたそれを長岡に手渡すと、綺麗な目にやわらかな色が見えた。 そして、手が伸びてくる。 「俺にまで気を使うなって何時も言ってるだろ」 「でも、誕生日は1年に1度の大切な日です。 俺にとっても大切な日です。 それに、俺も貰いました」 「すっげぇ嬉しいけど、その分遥登が田上達と遊ぶのに金を使って欲しい気持ちもある。 でも、やっぱ嬉しい…すげぇ嬉しい」 ぎゅぅっと抱き締めながら何度もありがとうと気を使うなを繰り返す。 どっちも本音だ。 自分の事を考えてくれているのがよく解る。 肩に顔を埋めてにおいもぬくもりも一人占め。 ぶんぶんと大きく揺れる尻尾は三条だけじゃない。 一頻り抱き締めてからゆっくりと身体を離された。 「ありがとう。 開けて良いか?」 「どうぞ。 気に入っていただけると良いんですけど」 丁寧にリボンを解くとそれをぐちゃぐちゃにする事なく隣に置き、また丁寧にテープを剥がしながら包装を解く。 そして、現れた箱の中を見て長岡の目が綺麗な色を浮かべた。

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