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第188話

大きな手にとられたペンケース。 「やべぇ」 シンプルだけど艶やかな皮が高級感があって安っぽく見えない。 20代の長岡でも、もっと年を重ねていっても、どの年代になっても似合うと思った。 よく使うボールペン─修学旅行のお土産─は胸ポケットに指しているが、それ以外の授業中に使うシャーペンや赤ペン、消ゴムの類いはペンケースに入れ持ち歩いている。 授業中ずっと目にしてきたそれは学生時代から使っているのか長岡の手に馴染み、卓上で居心地良さそうにしていた。 そんな風に使って貰えればペンケースもしあわせだろう。 そんな気持ちで選んだ。 待ってろと寝室から通勤用鞄を持ってくると中から見慣れたペンケースを取り出し、その場で入れ換えてくれた。 「え、変えるんですか?」 「え? 変えるだろ」 「部屋で使えば…良いなと、思って…」 「それじゃ自慢出来ねぇだろ」 まさか、この場で変えてくれるとは思っても見なかった。 と言うか、自宅で使って貰えれば位に思っていたのに。 さも当たり前にそうする長岡はチャックを閉めて、満足そうに見せてくれる。 「似合うか?」 「はい。 とっても」 「でも、遥登には見て貰えねぇのか」 「…すぐに追い付きます」 その為の勉強をしている。 あと少し。 3年なんてあっという間だった。 だから、あと少し。 「楽しみに待ってる」

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