194 / 1502

第194話

「長岡さんが赴任してきてから生徒の出入り増えましたよね。 賑やかになりました」 「そうなんですか? すみません、教え方合わないですかね…」 前の学校はそこそこの進学校だった。 クラスの殆んどが進学希望者。 レベルも高い。 此処は平均的なレベルの学校。 ノートを作り替えたりしているが、合わないのだろうか。 教え方を変えるべきか。 「いや、多分、長岡さんに会いに来てるんです。 その写真も噂になってますよ」 そう歳の変わらない同輩はその写真、とA組と写っている写真を指差した。 パソコンの隣に置かれた大切な写真。 この写真…? キャラクター物のネクタイを締めてはいるが、この写真じゃわからないだろう 何を見てるんだ…? 花か…? 「何時もクールな長岡さんのまた違った1面が見れるって、女子生徒達が話してました」 「クールって…」 「綺麗な顔ですからね。 俺も長岡さんみたいな顔に生まれたかったですよ」 そう言いながら同輩は飯を口に運んだ。 そもそも、長岡は自分の顔なんかに興味はない。 自分からは見えないし、見えたって顔より本が良い。 だけど、三条が好きだと言ってくれるから、気に入ってきた。 ただそれだけのもの。 この顔ならこの顔なりに色々あるのだが、隣の席の国語教師は知らない。 世の中そんなものだ。 つい無い物ねだりをしてしまう。 長岡も弁当箱の蓋を開けた。 今日は白身魚のフライに野菜餡が掛かっている。 いただきます、と手を合わせるのは恋人の行動が移っただけ。

ともだちにシェアしよう!