201 / 1502

第201話

バス停から部屋に向かうには上り坂だが、駅からは下り坂だ。 のんびりと歩いて行く。 照り付ける太陽はまだ眩しいが、空の色はすっかり秋だ。 並木も色付きはじめた。 くるくると躍りながら足元に積もる落ち葉。 踏むと焼き立てのパイみたいな軽い音がする。 子供の頃の様に落ち葉だけを踏み締めたりはしないが、少し楽しい。 角を曲がろうとした三条はマンション前に人影を見付け、足を止めた。 やば 誰かいる… マンションの住人でない人間の出入りは目立つ。 それも目立つ長身の若い男となれば殊更だ。 田舎だからこそ見掛けない人間の行動は注意の的。 体調悪いのか…あ、 その後ろ姿はよく知ってる人の背中だった。 よく見なくとも間違える事はない。 大きな背中。 更に除き混むと、大きな手が小さな生き物の頭を撫でている。 猫を2匹飼っていて慣れているせいか猫も大人しく撫でられている。 気持ち良さそうで羨ましい。

ともだちにシェアしよう!