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第202話

猫を撫でる長岡を隠し撮りしようとスマホ画面をタップすると思いの外大きな音でシャッターが切られてしまった。 あ、と思うより早く長岡は此方を向く。 バレた… 撫でられていた猫は一瞬目を開けたがまたゆっくりと閉じ日向ぼっこを楽しんでいるかの様に動かない。 三条の姿を見付けた長岡は小さく笑みを溢すと、もう1度猫の頭を撫で立ち上がる。 ポケットから何かを取り出すと、手の中が震えた。 『えっち』 画面から顔を上げると、長岡はふと表情を緩めてマンションに入っていく。 『早くおいで』 続けざまに送られてくるメッセージ。 後を追い掛ける三条の足元で猫がナンと鳴いた。 撫でないのか、と目を閉じる猫。 三条も頭を撫でると猫は満足したかの様に大きな欠伸をする。 のんびりしていて自由で、気高くて、恋人みたいだ。 「またね」 恋人に似て自由な猫に三条はひとつ笑うと手を振り、もう姿の見えない恋人の部屋へと急いだ。

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