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第232話

「遥登」 清潔さを取り戻した三条はタオルケットにくるまったまま背中に張り付いている。 なんとか手だけは握れているが、今日は暫くふとんに籠ったままだろう。 「麦茶飲むか?」 恋人は額を背中に押し付けながら首を左右に降る。 「アイスは?」 また額を押し付けながら首否した。 「いじめ過ぎたな」 これも否定だ。 細い指を握る冷たい手を爪の形を確かめる様に動かす。 細くて白くて棒みたいな指。 利き手のペンダコはこれまで学業に真摯に取り組んできた勲章だ。 「……もら、した…から」 「嬉ションだろ?」 ぐりぐりと頭を擦り付けて否定した。 正確には小便ではなく潮だが、その否定ではない。 「俺が漏らせって言ったからな」 「……だけど」 「だけど?」 小さな返答に、長岡は綺麗な花を咲かせた。 「そうか。 気持ちかったか。 良かった」 三条の喉元でカチっと金属音がいまだにする。 「俺も気持ちかった」

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