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第249話

三条は、ちびちびとコーヒーを飲みながら身体をあたためる。 最初は熱いと思ったマグも手に馴染めばあたたかい。 「遥登んとこ大丈夫で安心したよ。 A組も被害ねぇっぽいか?」 「大丈夫です。 みんな返事くれましたよ」 今でも稼働している元A組のグループLINE。 県外進学、就職組も県内組も大丈夫かと確認し合った。 「なら良かった」 「長岡先生は真面目ですね」 「真面目な教師が教え子に手ぇ出すかよ」 自虐気に笑う長岡も格好良い。 確かにそうなのかもしれない。 だけど、長岡は真面目な良い先生だ。 きちんと生徒を1人の人間として見てくれていた。 子供の目線を忘れず味方でいてくれた。 その立場になって相談にも乗ってくれた。 偉そうに振る舞わず対等に居てくれていた。 それを三条以外も知っている。 A組のみんなが知っている。 そして、関係の終わった今でも心配してくれている。 「真面目な良い先生です。 俺が言うんですよ、そうなんです」 決して譲らない三条に長岡は頭を掻いた。 「…ありがとうございます」 ふわふわと笑う三条には敵わない。

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