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第252話

冷凍のうどんをレンジであたためている間にかけ汁を作る。 と言っても白だしだが。 少し甘めにして油揚げを入れると箸を並べて戻ってきた三条の目が輝いた。 「好きか?」 「はい。 とても」 本当なら油揚げは別に甘辛く煮た方が美味いのだが、なんせ男の料理だ。 せめて別容器に取り分けレンジ加熱でもすれば良かったのかも知れない。 だけど、嬉しそうな顔を見せてくれる恋人は気にしてなさそうだ。 「とてもか。 本当、好き嫌いねぇよな」 「なんでも美味しいですけど、正宗さんの作ってくれるのは特別美味しいです」 「タラしみてぇな事言って。 大学でもタラし込んでんじゃねぇだろうな」 「正宗さんじゃあるまいし、そんな事しませんよ」 俺だってタラさねぇよと頭を撫でくり回すと、タラし込まされましたと穏やかな笑顔で言われた。 そんな酷い男ではないと言いたいが、無垢な教え子を脅し弄んだ自覚があるだけに言葉に詰まる。 「成長期こえ…」 満足気に微笑む恋人はまた成長したようだ。 丼に加熱の終わったうどんをあけ、汁をかける。 更に冷凍の葱を袋から直接かけ出来上がり。 「冷めない内に食うか」 「大人げない…」

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