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第256話
「久し振りですね。
大学生活はどうですか」
「楽しいです。
解らない事が解るともっと興味が湧いてきて…」
「ん?」
「先生も元気そうで良かったです」
「元気ですよ。
三条も元気そうで良かったです」
長岡だ。
私服の長岡。
だけど何時ものシンプルな服と違い、少しカッチリしている。
長岡先生の私服姿と言った方がしっくりくる出で立ち。
自分に似合う物を理解している。
すごく格好良い。
「大丈夫か?
人混みで疲れたか?
悪いな引き留めて」
「そんな、事は…ないです」
本当にそんな事はない。
見惚れているだけ…
会いに行こうと思っていた人が目の前にいるんだ。
嬉しくない訳がない。
女の人が振り返っている。
色めく声もする。
それでも、会えて嬉しい。
一言、二言、言葉を交わす。
「じゃ、三条また」
「はい…」
頭を下げると、横を通り過ぎる際に長岡は羽織っていたアウターのポケットを爪でコツッと叩いた。
これも知っている。
すぐにメッセージを受信したその画面には、
『ついておいで』
の文字。
三条は人混みに紛れた。
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