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第270話
「ただいま」
「あの…おかえりなさい」
「ただいま、遥登」
夕食の買い物をし帰ってきた長岡を、部屋着に着替えた三条は恥ずかしそうに出迎えくれた。
何時もの嬉しそうな顔とは異なるがこれはこれで可愛い。
「襟足湿ってんじゃねぇか。
先に乾かすぞ」
「大丈夫ですよ」
「風邪引いたら会えねぇだろ」
冷蔵庫に買ってきたものを適当に片付けると、ソファに腰掛ける様に言いドライヤーを取りに洗面台へと向かう。
しっとりとした空気に浴室を見やるとなんだか生々しくてグッときた。
そんな簡単に座っているとは思ってはいなかったが、戻って来るのを突っ立って待っている姿を見るともっと懐かせなければと思う。
やっぱり座らせてから行けば良かった。
ついでに乾いたタオルを持ってきた長岡は、それを頭に被せ温風を当てていく。
「もう少し自分に気を使え。
風邪引いたら会えねぇだろ?」
「それ、正宗さんが言いますか?」
「担任してる時、学校休んだ事ねぇだろ」
「俺だって皆勤でしたよ」
「体調崩したけどな」
それに関しては自分が仕掛けたからで責めるつもりもなければ、自分が責められた事でもない。
だけど、今は部屋で待っていてくれる。
それだけは本当に安心だ。
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