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第272話
優登は中学の玄関からぼーっと外を眺めながら、靴を履き替える。
パタンっと閉じるとそっと外を覗いた。
止む気配ねぇな
午後から降りだした雨はザーザーと降り頻り、止む気配を見せない。
仕方なしに濡れて帰るか。
この歳になって母親に迎えに来てと言うのも違うと思う。
俺が忘れたんだし、自業自得だ
パシャっと雨を踏んだ時、見馴れた自動車が目の前に停まった。
「優登」
開いた窓から声をかけるのは兄。
ひらひらと手を振り、何時もの笑みを称えている。
それに気が付いた優登は嬉しそうに駆け寄った。
「兄ちゃんっ、来てくれたのっ」
「ほら、先に乗りな。
びしょびしょだろ」
「うん」
母から持たされたタオルを手渡すとわしゃわしゃと豪快に髪を拭いた。
ジャージも粗方拭き終わると漸くシートベルトが出来る。
優登がシートベルトをしたのを確認して、兄は車を走らせた。
「夕飯の買い物もして帰るけど、良いか?」
「うん。
夕飯なに?」
「んー、きのこ安いから味噌汁はきのこかな。
あとはなに食いたい?」
「肉が良い」
「若いもんな。
みぞれ煮とかは」
「がっつりいきたい」
「じゃ、きのこと豚肉のオイスターソース炒め」
「最高!」
5限目が体育だったからがっつりいきたい。
というか、給食を食べて体育はないだろ。
腹は減るし、満腹で動けば腹が痛くなる。
「な、買い物終わったらあんまん食おうか。
俺も腹減ってんだ」
「兄ちゃん大好き!」
思春期真っ只中の弟だが兄にはでれでれだ。
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