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第276話

「ただいま」 家に帰ると口癖の様に言ってしまう。 誰も居なくても言ってしまうから口癖の様、と言うか反射条件と言った方が違い。 「2人共、おかえり」 「ただいま」 「ただいま。 お、綾登美味しそうなの飲んでんだな」 6ヶ月をむかえる綾登は麦茶を飲んでいた。 ミルクに湯冷まし、麦茶。 離乳食も少しずつはじまり小さくて大きな成長に日々わくわくしている。 もう少ししたら同じ物が食べられる。 そうしたら沢山美味しい物を一緒に食べたい。 その日が楽しみだ。 「俺も飲もー。 兄ちゃんもいる?」 優登は一足先に手洗いうがいを済ますと冷蔵庫を開けた。 そんな優しい弟の頭にぽん、と触れるとまだしっとりと濡れている。 「うん。 これ冷蔵庫にしまいたいし俺がする。 優登は風邪ひく前に着替えて来いよ」 体育で汗をかいたのに、スーパーで冷えただろうし、先に促すと素直に頷いた。 兄の言う事なら素直にきく、と母は笑っていたがそんなもんなのだろうか。 1番子だからよく分からない。 「俺も飲むから一緒に飲もうな」 綾登の頭を一撫でして優登は部屋を出た。 ちゃんと兄の顔をしている弟が眩しい。

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