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第316話
気持ち良さそうに毛布にくるまる2人は清潔にしたベッドで昼寝をしている。
食べるか寝るか本を読むかばかりだが、2人にとってそれはしあわせだ。
三条を抱き締める長岡も、
長岡の背中に手をまわす三条もとてもしあわせそうな顔をしている。
2人にはそれ以上はない。
デジタル時計が音もなく時を刻み、窓の外は色を変える。
飲み掛けのマグの隣に置かれた机の影が辺りに溶けていく。
ゆっくりと、だけど確実に時間は進んでいた。
その分だけ積み重なった今。
懐いてくれた今がある。
汚れたシーツやらバスタオルをくるくる回す洗濯機も、当たり前になった特別。
サイドチェストに置かれた文庫本は今日はもう開かれる事はないだろう。
「まさ…」
夢の中でも恋人と一緒にいる三条が名前を呼ぶと、長岡の口角が僅かに上がった。
こんな無防備な顔が見られるのは三条だけ。
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