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第318話

マグを持ったままじっと此方を見てくる三条に、長岡は中はとうとう声をかけた。 「どうした」 「え…?」 三条は僅かに驚いた顔をした。 そして、少し考えてから漸く口を開けた。 「え、と…………今日は噛まないんだなぁって思いまして」 「ふはっ、マジか」 「正宗さんが沢山噛むからじゃないですか…」 長岡ははじめに言った通り優しく抱いてくれたし、何処もかしこも溶けそうな程気持ち良かった。 事後の入浴だって甘えたし。 だけど、セックスの最中にあれだけ噛まれ続けた身体はあの痛みがないと物足りないと思うまでになってしまった。 はしたない身体で恥ずかしい。 ふい…と顔を逸らせてしまった三条は優しく頭を撫でられ、恋人を一瞥した。 「噛んで良いか?」 長岡が小首を傾げると無造作に整えられた前髪がさらっと細められた目元にかかった。 その色っぽさにクラクラする。 長岡はもう少し自分の顔立ちの良さを理解した方が良い。 その顔はやばい。 語彙力がなくなる位、やばい。 「あの、お願いします…」 「ん、お願いされました」 マグを奪われ、改めて襟刳りをぐっと開けられるとやっぱり羞恥心が勝ってくる。 心臓がドキドキと長岡にまで聴こえてそうな位五月蝿い。 待ってと肩に触れるも、口を開けた長岡の方が早かった。 クッと犬歯が若い肉に突き刺さる。 「…ぃっ」 皮を噛み、付きの悪い肉に痛みが走った。 それなのに、涙が滲む程の力が嬉しい。 くっきりと歯型がついた肩を見て三条はどこか満足そうな顔をした。

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