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第319話

マグを持ったままじっと此方を見てくる三条に、長岡は中はとうとう声をかけた。 「どうした」 「え…?」 三条は少し驚いた顔をした。 そんな分かりやすい顔をして、どうもしてない筈はない。 それに、三条は話したくても話しにくい内容の時等にじっと見る癖がある。 概ね話し掛けるタイミングとどう切り出そうかを考えているのだろう。 言うと意識してやめそうなので絶対に言わないが。 「え、と…………今日は噛まないんだなぁって思いまして」 「ふはっ、マジか」 「正宗さんが沢山噛むからじゃないですか…」 思っても見なかった返答につい笑みが溢れる。 なんだその可愛いお誘いは。 恥ずかしそうにふい…と顔を逸らされてしまい、更に笑みは色が濃くなる。 最初に宣言した通り優しく抱いたが、物足りなかったのか。 そりゃ、俺だって噛みたかった。 言った手前我慢したが、これは希望通り噛んでやりゃなきゃな。 「噛んで良いか?」 此方をちらっと見てきた三条は、ぱぁっと顔色を変えた。 恥ずかしそうに、そして嬉しそうに。 そして色っぽい顔をして頷いた。 「あの、お願いします…」 「ん、お願いされました」 まずはマグをサイドチェストに置いてからだ。 溢しでもしたら三条はそちらばかりを気にしてしまう。 改めて向き合うとグイっと首元を露にした。 襟刳りを開くと真っ白な首に伸びる胸鎖乳突筋と鎖骨。 美味そうな柔肌だ。 あ、と口を開けたまま近付くと同じボディソープのにおいがした。 「…ぃっ」 肉付きが悪い三条だが、噛むと僅かに肉を感じられる。 そのやわらかな肉に犬歯を突き立て、三条の言葉通り噛み付いた。 ぎり…と くっきりと着いた歯型に満足感が溢れてくる。

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