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第339話

作業台の上には作りかけの飯があった。 美味そうなにおいの正体はこれか。 摘まみ食いをしたいが先ずは手洗いうがいだ。 風邪もインフルもひいている暇はない。 生徒、特に今が踏ん張り時の3学年に移すわけにはいないからな。 「な、ケーキ見て良いか?」 「どうぞ」 マフラーすらそのままの長岡は冷蔵庫を覗いて早々、真っ白い箱見付けて中を覗いた。 「チーズケーキ。 また俺の事優先させたのかよ」 困った様に、だけど嬉しそうに長岡はそう言った。 それを見た三条は何時もの顔でふわふわと笑う。 「チーズケーキの気分だったんです。 それに、クリスマスだから苺ものってるんですよ」 確かに三条の言う通り、ベイクには珍しく果物があしらわれている。 砂糖菓子のサンタが笑ってるのを買えば良いのに何時も自分を優先させてくれる優しい恋人。 なんで自分の好きな物を買わないのか。 なんで自分に金を使うのか。 理由なんて解っている。 自分と同じ理由だろう。 「ありがとな」 「へへっ、どういたしまして。 正宗さんも、フライドチキンありがとうございます」 「やっぱ、クリスマスは鶏肉食うだろ」 あたたかい部屋に三条の笑顔が咲き乱れる。 ただそれが嬉しい。 「正宗さん、早く食べましょう。 あ、先ずは着替えですね」 「あぁ、忘れてた。 すぐ着替えてくるから待ってろ。 後は俺がする」 三条が用意していてくれたご馳走とフライドチキン、それとケーキ。 何時からこんなにこの部屋は明るくなったんだろうな。

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